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【連載】EXILEになれなくて #17|小林直己

第三幕 「三代目 J SOUL BROTHERS」という運命


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四場 ラタタダンスは、どこからきたのか?

 映画は、2時間でメッセージを伝えるコンテンツであり、ドラマは、50分で人を惹きつけ次の展開を気にさせるコンテンツである。朝ドラは、15分を100話以上も放送することで日常に潜む美しいストーリーを伝え、MVは、5分という曲の長さで楽曲の世界観を伝えきる。

 それらに対して振り付けは、あるポイントの一瞬、時間にして5秒ほどで、そのインパクトを残す。そして、それに成功するかどうかで、見続けてもらえるかが決まる。アイキャッチ(印象的なもの)があるかないかで、真似してもらえるかどうかが決まってくる。そしてその結果、広がりを生むかどうかが決まってくるのだ。

「幅広い世代に、楽しみながら真似してもらえるもの」。これが、「ポッキーダンス」や「ラタタダンス」で求められているものだと僕は狙いを定め、振り付けた。もちろん、楽曲には様々なタイプがあり、都度、求められる振り付けは異なる。しかし、三代目として求められるエンタテインメントはPOP=Popular(人気のある)である。その場合は、やはり出来るだけ多くの人にアプローチできる可能性が大きいものを求められているはずだ。しかし、そういった振り付けを作ることは、僕にとっては、少々困難もつきまとうことだった。つまりこの行為は、これまでダンスの技術を高めようとしてきた、自分の変なこだわりから抜け出すことと同意義で、こだわりグセがある僕は、そこから抜け出すのに、まず一苦労だった(笑)。

 良い振り付けとは、簡単なものであり、体の動きに無理のないものである。また、その振り付けがあることで、より歌が聞こえたり、曲の特徴を、見ている人に感覚的に伝えることができる。だからこそ、「シンプル」かつ「印象的なもの」、それらをキーワードに作り始めた。

 また、同時に過去に流行った振り付けも、研究していった。星野源の「恋ダンス」や、AKB48や乃木坂46、K-POP、TikTokで流行っているものや、遡ってピンクレディー、郷ひろみ、幼児番組も見て、「しまじろう」など、とにかく老若男女が真似して楽しめるものの共通点を探していった。

 すると、いくつかの共通項が出てきた。「面白い手の形」「顔の周りに手を置く」「中毒性のあるリズム」の3つである。詳しく説明していこう。

 少し考えれば簡単にできるのに、普段の生活ではやらないもの。それが1つ目の「面白い手の形」である。

 2つ目の「顔の周りに手を置く」は、主に女性アイドルの振り付けから気づいたことだ。顔がぶれずにカメラに映るには、顔の周りで振り付けを行い、体幹には干渉しない(顔が揺れない)ことが重要だ。しかも、顔の周りを囲むような振り付けにすることでフレームができ、小顔にも見えるな仕掛けをしている振り付けもあった。(主に乃木坂46の振り付けだった)このことは、振り付けを広め、真似してもらう上で重要なことだった。

 3つ目の「中毒性のあるリズム」は、僕自身がダンサーとして感じてきたこと。自分自身からアドレナリンを出していくような、原始の時代から続くリズム、つまり、無意識に心地よいと感じるリズムを生むための、中毒性のあるリズム取りのことである。

 早速振り付けに入ったのだが、まず、最初にしたことは、最終的な画をイメージすることだった。ポッキーダンスで言えば、登坂と岩ちゃんと僕が、CMやライブで踊っている姿。それを考えると、この3人がやりやすい動きが良い。だとしたら、登坂が普段、ライブでよくやる動きの1つをアレンジして振り付けると良いかもしれない。そう考え、作っていったのがポッキーダンスだった。

 対して「ラタタダンス」では、楽曲の「Rat-tat-tat」(2019)とともにUSJのCMに、NAOTOと健二郎が起用された。2人がそこで踊ることになる。だとしたら、2人が得意とする動きの方が良い。NAOTOは手や腕を使い、四角形などの図形を作ったりピラミッドの壁画に描かれた人物図のポーズからインスパイアされたダンス「タット」が得意である。健二郎は言わずもがな、「ステップダンス」を得意としている。それを組み合わせれば、良いのができそうだ。

 そうして生まれた「Rat-tat-tat」の振り付けは、予想外の広がりを見せてくれた。ライブ会場では、曲がかかると、今か今かと待ちくたびれていたかのように、一斉に客席から手が上がる。みんなが一斉にメンバーに振り付けを見せてくれるんだ。その光景といったら、振り付けを考えた僕からしてみたら、涙が出るほど嬉しい。一生懸命、家の洗面所で僕が一人で考えた振り付けが、5万人もの人が集まった会場で、みんなが一斉に踊ってくれている。信じられない。こんなご褒美があるから、スタジオにこもり、陽の光に当たらない日々が続くリハーサルの期間も頑張れるんだと再認識する。

 続いて振り付けした三代目の「Movin’on」(2020)という曲の一部分、その名も「ドライブダンス」は、何から発想したかというと、メンバーのELLYが、パフォーマンス中によく、印象的な手の形のポーズをするのだが、そこからインスパイアされたもの。ライブ会場で客席のみんなと一緒にできることを楽しみにしていた。

 しかし、このあたりのリリースは新型ウイルスの影響により発令された、緊急事態宣言のタイミングと不運にも重なってしまった。ライブも中止になってしまい、パフォーマンスする場所自体も失った僕自身も、どうして良いか分からず、家にこもりながら気持ちも沈んでしまっていた。しかし、ステイホーム期間中、どうにか楽しんでもらえることができないかと、LDHのエンタテインメントサービスである「CL」にてキャス生配信を始めた。また同時に、Instagramも毎日投稿し、そこで「ドライブダンス」を踊るようになった。「ドライブダンス」は、「車で出かける時に、渋滞などでも気分転換でみんな踊れるように」と、トヨタレンタリースさんとのタイアップを活かそうと考え、そこからもアイデアを膨らませた振り付けだった。上半身しか自由にならない車の座席は、スマホの画角での自撮りと、ちょうどサイズが合うものだった。

 そうして、たくさんの「ドライブダンス」動画がSNSにアップされ始めた。その動画は、自宅でこもりっきりになっていた自分をすごく励ましてくれた。これがきっかけとなり、その後も、SNSなどで楽曲を募集し、新たな振り付けを作ったりした。SNSを介した多くの人交流が生まれていった。これは、ステイホーム中に起きた一番大きな出来事で、活動に関する考え方が180度変わることになった。

 その後、徐々に活動が再開された後も、SNSの更新は続け、2020年11月には、僕のInstagram公式アカウントで主演映画を配信し(今も観れるので是非観に来てほしい)、また、11月には小林直己オフィシャルYouTubeアカウントを開設することとなった。
 
 SNSの発達と5Gの普及により、個人がマスメディアになりうる可能性が生まれた。また、大きな情報が手のひらのスマホに届くようになった今、「どのように自分や商品を演出していくか」ということは、どんな職種の方々にとっても大切になってきている。それは、ビジネスを優位に運ぶだけでなく、身を守るためにも。

 Instagram Japan社とのある打ち合わせの時に、「安全会議」というイベントの話を聞いた。最近では、1つの投稿がバズってしまい(流行ってしまい)大きな注目を集め、ネットリテラシー(インターネットに対する理解力)が低いまま、インフルエンサーとして有名になってしまうことも珍しくないという。そして、様々な問題に巻き込まれる事例が増えているというのだ。Instagram Japan社は、そんな若い世代のインフルエンサーに対し、「安全会議」というイベントを行い、SNSを利用する上での身の守り方と、ネット上の自分の見え方のコントロールなどを教えているという。

 ネガティブなこともあるが、コントロール次第では、前述した振り付けのように、大きなうねりを生むことができるSNSとオンライン・コンテンツ。そして、それをコントロールするための振り付けと演出が、この時代に持つ力を改めて感じている。皆さんも、もう一度、世の中にある素晴らしい振り付けの数々や、演出を見てほしいと願う。

(# 18 につづく)

■小林直己
千葉県出身。幼少の頃より音楽に触れ、17歳からダンスをはじめる。
現在では、EXILE、三代目 J SOUL BROTHERSの2つのグループを兼任しながら、表現の幅を広げ、Netflixオリジナル映画『アースクエイクバード』に出演するなど、役者としても活動している。

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