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インドが変える世界地図米・中・印3Gの時代は来るのか

文・広瀬公巳(NHK元ニューデリー支局長)

 使い捨てプラスチックは禁止!! 駅の売店でレジ袋は使えず、国鉄の職員はエコバッジを着用。電子タバコもご法度だ。世界のトレンドを先取りするような、こんな政策を決定した国はどこかお分かりだろうか。路上に物乞いや栄養不良の子どもたちがあふれる途上国のイメージが抜けない、あのインドだ。

 インドは、グーグル、マイクロソフト、ヤフーのトップを輩出したIT人材先進国。情報通信分野の最先端技術を生かし、アジアで初めて探査機を火星の周回軌道に乗せ、生体認証を導入したインド式マイナンバーで全国民13億人のビッグデータを集めている。その一方、高額紙幣(日本でいえば5,000円札と1万円札)を使用禁止にするショック療法を断行、なんと1億箇所にトイレを設置すると宣言し、先日それが達成されたと発表した。汚職撲滅や悪名高いインドの衛生問題解決のためとはいえ、「インド人もびっくり」の政策が次々に。

 それを打ち出しているのは、インド北西部グジャラート州の貧しい家に生まれ、幼いころは駅でチャイ(インド式ミルクティー)売りを手伝った叩き上げの政治家、ナレンドラ・モディ。2019年5月に総選挙で圧勝し、首相に再選されて10年の長期政権を担う。独立以降、長きにわたった国民会議派の「貧者のための政治」は終わり、不安定な政治に明け暮れていたインドに、ようやく強い指導者の時代が到来した。そのモディが率いるインドは、一人っ子政策で高齢化が進んだ中国と異なり、若い労働力にあふれている。このままの勢いを持続すれば10年以内に世界一の人口大国となり、経済規模も日本とドイツを抜いてアメリカ、中国に次ぐ第3の大国になると予測される。

インドにラブコールを送る各国首脳

 そのインドに、先を争うように急接近しているのが閉塞感に悩む先進各国だ。2019年8月、フランス南西部ビアリッツで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、「米国第一主義(アメリカ・フアースト)」を掲げるトランプ大統領に国際協調路線を否定され、大きな成果なく閉幕という結果になる。このサミットの影の主役は、特別ゲストとして招かれたモディ首相。「気候、生物多様性、海洋」などの分科会に参加し、首脳外交も積極的に展開した。

 自国製戦闘機「ラファール」を売り込んでいるフランスのマクロン大統領は、ロシア製一辺倒だったインドの巨大な武器市場に触手を伸ばし、世界最大級の原発の輸出計画も目論む。核大国フランスにとって、同じ道を歩むインドは有望な顧客である。

「ブレグジット」に揺れるイギリスも同様だ。EUからの離脱を進めるためには、英連邦という大英帝国の遺産を生かして新たな経済圏を広げる必要がある。それには、インドの協力が欠かせない。インドの経済規模はすでにイタリアやカナダを上回り、かつての宗主国イギリスと肩を並べるまでになっている。

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