見出し画像

「不倫は楽しい! だから叩かれる」東出、斉藤由貴、ベッキー…人が不倫をやめない理由

毎週のように続く不倫報道。なぜ人は、これほどまでに不倫に陥るのか。そして、なぜ不倫をすると、これほどまでにバッシングされるのか。作家の林真理子さんと、脳科学者の中野信子さんが「不倫」をテーマに語り合った!

男は浮気しなさそうに振舞う

 今、週刊文春への不倫の情報提供がすごいらしいですよ。

中野 たしかに、東出昌大さんと唐田えりかさん、鈴木杏樹さんと喜多村緑郎さん、小泉進次郎さんと当時既婚者であった女性社長、和泉洋人首相補佐官と大坪寛子厚生労働省大臣官房審議官……、毎週のように不倫の記事がでている印象ですね。

 電話が鳴りっぱなしだって。私は今もFAXで手書きの原稿を送っているんですけど、そのFAXも使えなくなったの。「そのFAXはタレコミ用に使うから、別のFAXに送ってくれ」って(笑)。

中野さんは『不倫』という新書もお出しになっているんですよね。

中野 でも、発売されたのは2018年で、ベッキーさんの後、小室(哲哉)さんに関する記事が出て、不倫ブームは落ち着いた頃だったんです。

 今こそ、本屋さんは売らないとだめですね(笑)。

杏ちゃんはうちの近所にお住まいで、東出さんとおふたりで歩いているところも何度か見ましたよ。杏ちゃんに「主人です」って紹介されたこともありました。美男美女の本当に素敵なカップルでした。でも、杏ちゃんはお父さんの渡辺謙さんの不倫騒動もあったから、反面教師というか、浮気しない誠実な人を選びたかったでしょうね。

中野 そうだと思います。でも、女性が恋愛をするときは、どうしても一番身近な人――多くの場合はお父さんを基準にしてしまうんです。「そこを基準にした上での浮気をしなさそうな人」を探しちゃう。だから、同じ雰囲気のある人に心が動くのは仕方ないのかもしれません。それに男の人だって、最初は浮気をしなさそうに振る舞いますよね。

実は、私は知人に、東出さんによく似ていて女性関係が派手な人がいるので、勝手に「ああ、東出さんも似た感じなのかな」と思ってしまっていました(笑)。

 東出さんは今のところ、会見をやっていませんが、どういう対応をするのがいいんでしょう? このままやり過ごすのがいいのか。

中野 もう、僕は不倫をするだめな男です、イチから出直します、とひたすら謝るのがいいでしょうね。それもこれ見よがしにやってはだめで、憔悴しきった顔で謝る。自分は持っているものも全て失って反省しています、というのを見せる以外にないと思います。僕にも言い分がある、とかは絶対だめですね。

 報道の後に杏さんが「小さな子どももおりますので、どうかそっとしておいてください」と、公の場で述べたのは非常に賢明だと思いました。杏さんがどこかのタイミングで、これは夫婦の問題なので、私が彼を強く叱ります、って言えば収まるんでしょうけど……。

中野 ただ、杏さんは東出さんに対して引いてしまっているのではないかと思うんです。家庭内では収拾がつかず、どなたかに相談していたから記事になったのでしょうし。

画像2

中野氏(左)と林氏(右)

演技の評価が高ければ……

 でも、東出さんはどうしてここまでバッシングされてしまったのでしょう。例えば、妻の金子恵美さんの出産6日前にタレントと不倫をした、元代議士の宮崎謙介さんがいますよね。宮崎さんは、結婚式で出産後約1カ月の「育児休暇取得宣言」をしたでしょう。イクメンアピールをしていたから不倫をして叩かれてもしょうがないと思うんですけど、東出さんは家庭人アピールをしていたわけでもないですよね。

中野 うーん、言いにくいんですけど、私がどう評価しているかはさておき、一般からの演技者としての評価がもっと高ければ違ったと思います。杏さんと結婚して名前が売れた、とみんなどこかで思っていたんだと思うんです。それなのに義務を果たさず外で遊ぶなんてずるい、と。それで攻撃が激しくなってしまった。

 確かに、渡辺謙さんなんかはあれだけの演技力と評価があったから、なんかまあいいかというか、話題がすぐに消えた印象がありますね。

中野 「しょうがないよね」となったのは、そもそも協力し合う仲間でなく「あの人は特別だから」とわれわれが感じているからだと思います。ビートたけしさんも同じタイプですよね。

画像11

 浮気を隠さず、堂々としているタイプの人もバッシングされませんね。梅沢富美男さんとか、もう少し前なら松方弘樹さん、勝新太郎さんとか。奥田瑛二さんは、お嬢さんの安藤サクラさんが朝ドラの主演が決まったときに呼ばれて「この半年間はスキャンダル起こさないでくださいね」って言われちゃったって(笑)。

中野 元から浮気をしそうな方が浮気をしても、裏切られた感じがないですよね。女優さんでも斉藤由貴さんはそもそも魔性の女という印象があるからかそこまで叩かれなかったと思います。清純派で売っている人は危険ですよね。ベッキーさんはそういうケースでした。

女性は黙っていられない

 今回は東出さんのお相手の唐田えりかさんもつるし上げみたくなってしまいましたね。これはどういうことなんですか?

中野 インスタグラムに意味深な東出さんの写真をアップしていたり、「匂わせ」がずるいという印象を与えてしまったのかもしれないですね。清純な感じというのもマイナスに働いてしまったと思います。

 有名人と付き合っている女性は、ずっと黙っていることができないんですよね。「黙っててね」と言われたから私は黙っていたのに、公の場所にふたりで行ったり、堂々と食事をしたりしていて、「えっ」と思ったこともあります。友達の作曲家の三枝成彰さんは、「コンサートをすると不倫カップルは必ず目立つように帰るんだ。みんながまだ座って拍手している時、女の人がヒールの音をコツコツ立てて、男の人を追ったりして。あの心理はすごい」と言っていました。

画像8

中野 立場では本妻に負けている。自分だって男性から「愛の恩恵を受けている」と思いたい。でも、自分1人で思い込んでいるだけでは心もとない。だから、誰かにそれを知ってほしい、という心の裡を想像してしまいます。

 私が忘れられないのが、バブルのころに、友達とオペラを見に行ったときのこと。友達は妻子ある人と長く恋愛していたんです。そのオペラには様々な企業のトップの方がご夫婦でいらっしゃってたんですけど、それを見た友達がすごい冷たい声で「今日は正妻の見本市ね」って。

中野 「実効支配」しているのはこっちだ、という気持ちがあるのかもしれませんね。

 話は戻りますが、東出さんと唐田さんの不倫は映画での共演がきっかけだったみたいですね。ある女優さんは、ラブシーンについて、「疑似恋愛しないとキスなんか本当にできない」とおっしゃっていました。だから、切り替えができないまま「その後飲みに行こうとなったら危ないんじゃないかな」と思うそうです。

中野 実際に、そういう流れでお付き合いされる俳優さんたちも多いですよね。作った感情の中で自分を盛り上げて仕事をされるのは脳への負担が大きいんです。人間の嘘をつくときの脳の活動を測った実験があるんですが、真実より虚構を話しているときの方が、ずっと脳の活動が活発なんですよ。だとしたら、恋愛の演技をしているときはいつもよりも脳が活発に動いていることになります。オンオフに慣れていない若い役者さんだと切り替えができず、これは本当の恋愛だと思い込んでも仕方ないのかなと思います。

 根本的に、恋愛って錯覚しているだけなんじゃないかな。

中野 完全に錯覚だと思います。錯覚だから、ディズニーランドみたいな楽しさがあるのかもしれない。

若かったら不倫したい

 でも、私は若い女の子が同世代の男の子と恋愛しても実はそれほど楽しくないと思うんです。だって付き合っても、週末にどっちかの家に行って、鍋つついてみたいなパターンでしょう。それが妻子ある人が相手だと、夜明けにワーッと電話しながら泣いたり、いろいろドラマチックなことが起こるじゃないですか。

中野 「あ、奥さんのもとに帰るのね」とやるせなくなったり。

 「今日会ってくれるって言ったじゃん」っていうと「ごめん、子どもの運動会なんだ……」、「ひどい!」とか。若いうちの不倫って、せつなくてそりゃあ楽しいですよ。

中野 いいなあ。もう一度、若くなれるなら不倫したいなあ(笑)。 もっと研究室から外に出ればよかった。相手の奥様も、労力が分散されるのを密かに喜ぶ人がいるのでは……。寝盗られてつらい苦しいばかりの人だけではないでしょう。

 不倫は楽しいに決まっているんです(笑)。

中野 世の中からダイエット本がなくならないのと同じですよね。どんなにダイエットに成功しても、また絶対食べちゃう。どんなに不倫で痛い目にあっても世の中から不倫はなくならないんでしょうね。

 私、今よりずっと痩せていたとき、「痩せてもちっともいいことないや」って思って、また太っちゃった。言い訳にならないけど(笑)。

そうそう、中野さんのご本にあったんですけど、不倫遺伝子というのがあるんですか?

中野 アルギニンバソプレシン(AVP)という、相手に対する親切心や、性的なパートナーについての情報処理に関係する脳内物質の受容体があります。この感受性が鈍くなる遺伝子がいわゆる“不倫遺伝子”と呼ばれるものです。「貞淑型」と「不倫型」に分かれるんです。その割合は、おおむね半分半分だろうと推測されています。

 つまり私たちの周りにいる2人に1人は、人間の脳の仕組みからして、1夫1婦制の結婚に向いていないんですね。

中野 あと、脳の報酬系に作用して快楽をもたらす神経伝達物質であるドーパミンは、恋愛の初期に強く作用します。この受容体であるDRD4の遺伝子についても、ある特定の型を持つ人は、ギャンブルなどハイリスクハイリターンな刺激を求める傾向にあることが分かっています。昔、西原理恵子さんが広末涼子さんのことを評して、「高知の女はクジラの頭に乗りに行くような男が好きだ」とおっしゃる記事を読んだのですけど、そういう男性が浮気しやすいタイプですね。

制裁は快楽

 不倫型の遺伝子の存在が意味するのは、不特定多数と性交したり、数多くの子どもを残す方が繁殖に有利な時代があったということなんでしょうか。

中野 その通りです。浮気の原因は、自分やパートナーの性格やふるまい、意志や努力の問題ではなく、遺伝子や脳の仕組みによって決まる部分も大いにあるんです。

 不倫をバッシングする理由も科学的に説明できるんですよね。

中野 人間は社会的動物ですから、国家や家族、会社といった共同体を維持することで社会を作っています。共同体は、その資源(リソース)を増やすために、個人が一定の協力をして、共同体からリターンを受け取ります。

でも、中には自分は汗をかかずにおいしいところをもらおうという輩もいて、そういう人を「フリーライダー」といいます。社会はフリーライダーを許さないんです。

 不倫をする人は、家庭を維持するための有形無形のコストを払わずに、恋愛のおいしいところだけを享受しているように見える。

中野 そうなんです。われわれはフリーライダーに激しい攻撃を加えることが社会の秩序を守るための正義だと信じて行動します。制裁を加える人の脳内には、ドーパミンが分泌され、快楽を感じるんです。

怪物のような大衆

 それにしても、バッシングが、最近行き過ぎていませんか?

中野 ベッキーさんのときもバッシングがすごかった印象があるのですが、4年たった東出さんの記事は、それを上回る感じで燃え広がっていますよね。

 みんなSNSをやるようになって、ふつうの人が好き放題に書きこめる世の中になったわけでしょう。

画像10

中野 バッシングする人、したい人が、SNSというツールの普及で“見える化”してしまいました。また、会ったことのない人でも、SNSを通じて疑似的な仲間になってしまう。匿名であることもあいまって、それで攻撃をより激しくしているのだと思います。

 ちょっと異様ですよね。芸能人のあれこれを話すのも娯楽のひとつですから、家の中やお酒飲んでいるときに悪口を言うぶんにはまあ、いいと思うんです。でも、「斉藤由貴をCMから降ろせ」って電話をかけたりネットに書くときに、自分が惨めにならないのかなって思う。

中野 すごいですよね。本当に。砂糖に群がるアリみたい。大衆が怪物のように見えてきます。でも、わざわざコストをかけて何の得にもならない行動をするのがヒトなんです。それを実験した人がいて、6歳の子ども達を集めて、ゲームでズルをしている人を見せる。それで、「この人に罰を与えます。罰を与えるところを見たいですか」と聞く。すると、子どもは自分が大切にしているカードなどを差し出してでも、罰を見たいと言うんです。

 えー、残酷な実験ですね。

ここから先は、有料コンテンツになります。記事を単品で購入するよりも、月額900円の定期購読マガジン「文藝春秋digital<シェアしたくなる教養メディア>」の方がおトクです。今後、定期購読していただいた方限定のイベントなども予定しています。

★2020年4月号(3月配信)記事の目次はこちら

この続きをみるには

この続き: 3,615文字 / 画像3枚
この記事が含まれているマガジンを購読する
政治家や経営者のインタビュー、芸能人の対談、作家のエッセイ、渾身の調査報道、心揺さぶるノンフィクション……発行部数No.1の総合月刊誌『文藝春秋』が、あなたの人生を豊かに彩るコンテンツをお届けします。シェアしたくなる教養メディア。

文藝春秋digital

月額900円

月刊誌『文藝春秋』の特集記事&ウェブオリジナル記事が読み放題。2019年9月号以降の過去記事もアーカイブ。記事単体の購入よりもお得です。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

記事へのご意見・ご感想をお待ちしています。「#みんなの文藝春秋」をつけてご自身のnoteにお書きください。編集部がマガジンにピックアップします。皆さんの投稿、お待ちしています!

ありがとうございます!
17
シェアしたくなる教養メディア。100年近くの歴史がある総合月刊誌「文藝春秋」が、あなたの人生を豊かに彩るコンテンツを毎日お届けします。

こちらでもピックアップされています

文藝春秋digital
文藝春秋digital
  • ¥900 / 月

月刊誌『文藝春秋』の特集記事&ウェブオリジナル記事が読み放題。2019年9月号以降の過去記事もアーカイブ。記事単体の購入よりもお得です。

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。