詩ーー十田撓子【全文公開】

静かな木

かれは眠っている 坐ったまま眠っている

喉を締め上げられて 漆を少しずつ流し込まれて

かれは眠りながら声を失っていた

夏が終わる また夏が来る

雉の鳴く声と雨粒が葉を打つ音を聴きながら

廃寺の隅にじっとして かれはやはり眠っている

長大な体躯に刺青のような 黒く深い裂けめ

これほど傷ついたものでなければ美しくなかった

齢五百あまり

伐り倒されなかったけやきのなかで かれは眠っている



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