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竹中平蔵、菅総理への提言|東京を「政府直轄地」にせよ!

「フェアな競争」で経済の強い回復を——。新政権ブレーンが日本再生に向けた戦略を語った。/文・竹中平蔵(東洋大学教授・慶應義塾大学名誉教授)

<この記事のポイント>
●企業への支援は「貸付型」に変えていくのが望ましい。もともと経営が危なかった企業は救済しない
●東京はアメリカの「ワシントンD.C.」のような存在にし、都知事は「東京都担当大臣」として政府が任命ーーそれくらいの変革を
●「官から民へ、国から地方へ」が、「自助」の考え方の一つ

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竹中氏

ポストコロナで取り組むべき課題

菅義偉新政権は高い支持率を得て順調な船出となりましたが、目の前には課題が山積しています。

真っ先に取り組むべきは、やはり新型コロナウイルス対策です。菅総理は「感染防止対策と経済活動の両立」を強調していますが、この方向性は非常に重要です。コロナで傷んだ経済をどのように修復させ、日本を成長させていくのか――。短期的に取り組むべき対策と、ポストコロナを見据えて長期的に取り組むべき課題について、私の考えをお話ししたいと思います。

私は、コロナの感染状況を把握する上で最も注目すべきは、死者数だと考えます。とりわけ国別の状況を正確に把握するには、人口当たりの死者数に着目すべきです。

重要なのは、日本は欧米に比べて、この人口当たりの死者数が圧倒的に低いという事実です。比率にすると、アメリカやイタリアに対して約50分の1という低さです。なぜこれほどの差が出るのかは未解明で、専門家の方々の研究と議論が待たれますが、この事実を踏まえ、日本と欧米では、このコロナウイルスに対する免疫力に何か根本的な違いがあると考えるべきでしょう。

ならば、ウイルスに対する扱いを変えなければなりません。現在、コロナは日本では指定感染症の2類相当とされ、SARS、MERS、鳥インフルエンザなどと同じ分類です。このため、必要以上に感染防止対策をおこなわなければならず、社会と経済、医療現場が疲弊してしまっている状況です。まずは、コロナを指定感染症2類から除外し、傷んだ部分を回復させなければなりません。

その上で、出来るだけ効率よくPCR検査が出来る体制を整え、検査数を増やしていく。検査数の拡充については一部の専門家が、「検査は必ずしも完璧ではないから信用しすぎてはいけない」と批判しています。しかし、アメリカでおこなわれた研究によると、人は自分自身の感染の有無がわからないと消費マインドが下がることが実証されています。感染の疑念を検査で晴らしてあげることで、仕事をする、買い物に行く、旅行に行くという経済活動に前向きになれるのです。経済活動を活発化させるという意味でも、検査体制の充実は重要になってきます。

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淘汰されるべき企業は残すな

日本経済は4~6月期のGDPが年率でマイナス28.1%で、戦後最大の落ち込みです。しかし注目すべきは、日本は他国と比べ、失業率があまり上がっていない点です。コロナ前に2.5%だった失業率が2.9%に上がった程度。アメリカは4%台だったのが最高で14%台まで上昇したので、これは大きな違いです。もちろんコロナ禍で大変な思いをされている方は多いですが、欧米の混乱と比べると、日本の雇用は安定している状態と言えます。

ただし、気をつけたいのは、日本では失業者よりも休業者の数が多いということ。日本の失業者は197万人程度ですが、営業自粛や企業の休業命令による休業者は一時、数百万人に達しました。雇用関係は継続しているけれども、仕事をしていない状態の人々です。これは見方によっては“潜在的失業者”ということになる。この数字には十分注意を払わなくてはなりません。

11月16日には第3四半期のGDPが出てきます。恐らく、日本経済はV字回復にまではなっていないでしょう。せめて第2四半期の落ち込みの半分程度にまで戻っていれば、ここまでの経済政策はそれなりに効果があったと言えます。そこに達していないのであれば、第3次補正予算など追加策を検討すべきです。いずれにせよ、11月に出る数字を見極めて、今後の経済政策を考えていくべきです。

9月末現在、ウイルス感染によって亡くなられた方は国内で千数百名おられます。一方、自殺者は増加基調にあり、8月だけで1800人以上が亡くなっています。景気悪化と自殺の増加には明白な相関関係があり、バブル崩壊後に自殺者は年間1万人も増えています。経済的困窮によって命を落とされる方がここから増えないよう、経済対策を真剣に考えていかなければなりません。

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©iStock

「個人への給付金」はある程度続ける必要がありますが、これから重要になってくるのは「企業への支援金」の方向性をどうするかです。この方向性次第で、その後の日本経済の回復の仕方も、財政状況も変わってきます。

政府はこれまで、中小企業には最大200万円、個人事業主には最大100万円の、返済不要の持続化給付金を支給してきました。しかしながら私自身は、企業への支援はこれから「貸付型」に変えていくのが望ましいと考えます。

とりあえずは必要な資金を企業に融資し、返済は経済が回復するまで猶予する。今回ほどの非常事態であれば、据え置き期間と返済期間を相当長めにとる必要があります。また、金利をゼロにする特例を設けたり、将来的に貸付金を出資金に変更することも視野に入れていく。「貸付型」にする最大の理由は、銀行を通すことで、事業内容に対する目利きをするためです。事前に審査と選別をしっかりおこなうべきです。

ここで大事なのは、中小企業も含めて優良企業は突然死させないようにする一方、もともと経営が危なかった企業は救済しないということです。コロナ以前から経営がうまくいっていない企業は、今から融資を受けたところで立ち直ることは出来ません。淘汰されるべき企業を残しておくと、将来的に日本経済の弱体化につながります。

すでにビジネスモデルが破綻している企業には、これを機に市場から退出してもらう。そして退出した企業の労働力を、優秀な企業が吸収していけば、経済の強化を進めることが可能になります。

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健全でフェアな競争

コロナ後の日本経済を長期的に強くしていくためには、「健全でフェアな競争」が必要不可欠です。今の日本社会は既得権益層が、自分達の利益を生む「規制」を頑なに守ろうとしている。それが日本経済の発展を阻み続けているのです。だからこそ菅総理は、「規制改革」を政権の重要課題として位置づけています。

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