【イベントレポート】文藝春秋カンファレンス「教養と経営 課題解決の探索 ―問いを立て考え続ける力、疑う力、本質を見抜く力―」
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【イベントレポート】文藝春秋カンファレンス「教養と経営 課題解決の探索 ―問いを立て考え続ける力、疑う力、本質を見抜く力―」

3月15日(月)、文藝春秋カンファレンス「教養と経営 課題解決の探索 -問いを立て考え続ける力、疑う力、本質を見抜く力―」がオンライン開催された。

このイベントでは、経営課題解決のアプローチ方法としての教養を身に着ける方法、そしてそれをビジネスへ生かす方法に関して、実践者およびプロフェッショナルの講演を通じて検証が試みられた。

変革期に望まれるリーダー像、デジタル時代の競争戦略など、教養が切り拓く「未来のマネジメント」を視聴者とともに考える貴重な機会となったのではないだろうか。

特別講演Ⅰ

「脳から考える教養と経営」
~デジタル時代を勝ち抜くリーダーの条件~

茂木さま①

脳科学者
ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員
茂木 健一郎氏

冒頭を飾る講演を行ったのは、感覚の持つ質感「クオリア」をキーワードに脳と心の関係を研究し続け、さまざまなメディアにおける活躍でも知られる茂木健一郎氏。

人工知能時代における極めて重要な経営資源のひとつが「教養」であると茂木氏は語る。心理学の世界では、人間のパーソナリティは5つの要素で構成されるという理論が優勢だという。開放性、誠実性、神経症的傾向など、ビッグファイブと呼ばれるそのファクターをチーム内において上手く組み合わせるためには、AIにはない教養が必要とされるのだ。多様性の時代には、「人格力」が大事となる。

茂木さま②

『文藝春秋』と教養について語る茂木さん

また、IT企業を作るのに、プログラミング能力はいらないと氏は強調。アリババのジャック・マーやアップルのスティーヴ・ジョブズを例に挙げ、彼らの偉大さの源泉は、コンピュータのスキルではなく、経営上の大きなリスクを取ったその判断力にあると断じた。

現在、有効に使用されていない最大のリソースが人間の脳だという。脳を抑制から解き放ち、潜在能力を働かせることは、仕事において最大のパフォーマンスを発揮させるのみならず、気持ちのリラックスにもつながるのだとか。聴いているだけで脳が活性化する講演だった。

◆テーマ講演Ⅰ

「経営理論×IT」が実現する事業投資のリターン向上
~質問と説明で、稼ぐ力を引き出す予測管理プロセス~

小川様①

インテグラート株式会社 代表取締役社長
小川 康氏

インテグラート株式会社は、事業投資の成功を支援するソフトウェアと、コンサルティングや研修などの幅広いサービスをワンストップで提供している。そのトップを務める小川康氏が、経営における予測管理プロセスの重要性について語った。

事業投資の最大の課題は、予測に対して結果が下方乖離すること。ここにおいて、成長を阻害する本質的な問題は、予測よりも過去に目が向いてしまうことにある。

これからの予測管理に当たって小川氏が推奨するのが、「仮説指向計画法」。軌道修正を繰り返しながらゴール到達を目指すリスクマネジメントの手法である。ここでは、質問し、質問されることが重要な業務となる。つまり、事業部門と企画・管理部門の協力関係に基づき、組織の力によって意見の質を高める仕組みが構築されるのだ。

小川様②

視聴者からの質問に熱心に応える小川さん

同社の提供する予測管理クラウドが「DeRISK」。未来を考え、目標達成を促す組織DXを、経営理論とITを組み合わせて実現する。このソフトウェアシステムの導入によって、日本企業が問題を抱えている重要な業務に対して、解決ノウハウを得ることができるという。組織の学びを生かす仮説指向計画法と、それをIT化した業務基盤を活用し、事業投資のリターンを高めるこのシステムは、まさに時代を先取りしていると言えるだろう。

◆特別講演Ⅱ

リベラルアーツを武器にする
~カオスの時代に求められる「しなやかな知性」とは?~

山口さま①

独立研究家、著述家、パブリックスピーカー
山口周氏

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」とサイエンス』『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』など数々のベストセラーを世に送り続ける山口周氏は、経営におけるリベラルアーツの重要性を説いた。

近年、海外では、ビジネススクールではなく美術系大学院にエグゼクティブを送り込んだり、コンサルティング会社が相次いでデザイン会社を買収するといった動きが見られる。ここには、ビジネスの意志決定の拠りどころをリバランスさせる意図があるという。

20世紀後半において、人々の物質的欲求に関する問題はほぼすべて解決されてしまった。その結果、価値の転換が起き、モノよりも意味が、利便性よりも情緒・ロマンが求められることになったのだ。その好例として山口氏は、近藤麻理恵氏の著書『人生がときめく片づけの魔法』の世界的ブームなどを挙げた。

山口様②

リモートでの講演となった山口さん

「正解」があらかた見つかってしまった世界で、むしろ必要なのは「問題」を発見する能力であり、そのためには「常識=当たり前」から自由になることが必要。だからこそ、「リベラルアーツ=自由の技法」を身に着けることが大事なのだと強調し、講演を締めた。

◆テーマ講演Ⅱ

営業はデータから学ぶ時代へ
~デジタル教育で営業組織を強化するマネジメント~

岩田様①

ベルフェイス株式会社 グロースビジネスグループ セールスディビジョン
ゼネラルマネージャー
岩田恭行氏

岩田恭行氏は、オンライン営業システムの開発・提供および各種コンサルティングを手がける株式会社ベルフェイスにおいて、営業の責任者を務めている。

昨今、買い手側が求める営業スタイルは、訪問よりもオンラインへと移行。また、営業現場も、オンライン営業には好感触を得ている。しかし、訪問営業至上主義は企業に深く根付いており、実態とのギャップが見られる。今後は、顧客が求める営業チャネルを充実させ、営業と顧客の双方にとって有益な関係性を構築していくことが重要だという。

営業のオンライン化のためには、ナレッジ習得とトレーニングは必須。そして、データ=事実に基づき営業スタッフを教育し、顧客を理解することが肝要となる。

岩田様②

営業組織を強化するデジタル教育の重要性について語る岩田さん

オンライン営業システム「ベルフェイス」には、営業シーンの録画・録音データを蓄積し、それらを営業教育に活用するための機能が搭載されている。オンライン営業が一般化しつつある現在、現場と顧客の声を把握することに役立つ手段として強い味方になりそうだ。

◆テーマ講演Ⅲ

ビジネスに教養は必要か?
~教養こそがリーダーシップの源~

田中様①

株式会社ラーニングエージェンシー
人材・組織開発コンサルティング本部 取締役 副本部長
田中敏志氏

株式会社ラーニングエージェンシーは、人材開発と組織開発の最適解を提供する企業。田中敏志氏は、サービス企画開発の責任者を務める傍ら、さまざまな会社における幹部や管理職向けの研修を中心に年間150回以上講師として登壇し人材育成支援を行っている。

現在、限定的視点しか持たぬまま、激動する市場競争環境に臨んだり、バラエティに富んだ人材を率いたりすることは大変なリスクを伴う。その実例として、日本企業の海外進出におけるさまざまな失敗例などが挙げられた。

ゆえに、組織を率いるリーダーには多様な視点が必要とされる。そのためには、幅広い教養が求められる。歴史的背景、主要産業、生活様式、宗教的慣習などを知ることが、ビジネス環境の理解を深耕するのだ。また、哲学的思想、道徳的概念、人種や性差のとらえ方などをきちんと把握しなければ、多様な人々に対し影響を行使することは難しい。

田中様②

教養とリーダーシップの相関について語る田中さん

ラーニングエージェンシーは、「Life is all about LEARNING.(人生は学びである。)」をキーワードに掲げている。実際問題として、経験豊富なリーダーたちが自分の視点に固執せず他の視点を獲得し続けることは心理的ハードルが高い。同社の手がけるリーダー向けのさまざまな研修やサービスは、利用後の行動変容を意識してつくられている。企業人としての学びをより一層深める助けとなってくれそうだ。

◆特別講演Ⅲ

本物を見抜く教養の力
~リーダーの品格と輪郭~

佐藤様①

作家・元外務省主任分析官
佐藤優氏

佐藤優氏は、哲学、宗教から国際情勢にいたるまで、森羅万象に関する該博な教養を有する「知の巨人」。今回のイベントにはまさにぴったりの講師である。

佐藤氏が語ったのは、コロナの時代において求められるリーダーが認識すべき事象について。その第一が、「コロナ禍のもたらす影響」。ロシアや欧州の国々はワクチン接種をはじめとするコロナ対策において、日本と違ってあくまでも労働生産人口を維持することを最重要視しているという指摘には蒙を啓かれた。

第二が、「グローバリゼーションの流れに歯止めがかかった事実」。今後は、グローバリゼーションからインターナショナリゼーションへの転換が進み、世界的なネットワークは、企業ではなく国家を経由することになるという。現在、動向を注視しなければならない国としては、中国、トルコ、ドイツの3カ国の名が挙げられた。

佐藤様②

新時代の教養について様々な事例を提示する佐藤さん

第三が「格差の加速」。国家間、地域間、階級間、ジェンダー間……、複合する格差の問題に目を向けなければ、資本主義のシステム自体が危機に瀕するだろうと佐藤氏は強調。今こそ、経営者は『資本論』を読むべしと推奨した。

その他にも、ヘーゲルの言葉やエマニュエル・トッドの分析など、古今の賢人の知見を引いた講演はとても刺激的。新時代の教養の形が見えてくるひと時となった。

2021年3月15日 文藝春秋にて開催 撮影/深野未季

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