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コロナ下で読んだ「わたしのベスト3」 新しい読書のしかた|梯久美子

昨年秋に移り住んだ札幌では新型コロナの感染拡大が一足早く始まり、長いステイホーム期間を過ごすことになった。これから取材するテーマに関する本など読むべきものはたくさんあったが、いざ時間ができると手が伸びない。何を読んでいたかと言うと、もっぱら旅行記である。

河口慧海『チベット旅行記』は、漢訳の仏典に満足できず、1897年、原典を求めてチベットに旅立った僧侶・慧海による旅行記(というより探検記)だ。当時のチベットは鎖国中で、慧海は徒歩でヒマラヤを越え、密入国を果たす。首都ラサでは中国人やチベット人になりすまし、ひょんなことから医者として有名になってダライ・ラマ13世付きの医者にならないかと誘われ……と、波乱万丈の冒険譚が続く。そしてチベット一切経ほか、貴重な資料を持ち帰るのだ。まさに巻を措く能わずで、長大な紀行を数日で読み切った。

慧海の旅行記は時代も遠ければ場所もはるかだが、同じく長大なチェーホフの『サハリン島』は、時代は遠いが場所は近い。新千歳空港からなら飛行機で1時間と少しで、私はこれまでに3度訪れている。チェーホフがこの島に足を踏み入れた1890年には鉄道が通っておらず、船と馬車、徒歩で巡っているが、ところどころ私が見たのと変わらない景色の描写があって興味深い。

日露がせめぎあう辺境の地だったサハリン。そこに視座を置けば、ロシア革命もシベリア出兵も日露戦争も、別の側面があらわれてくる。

2冊とも、文中の地名をグーグルアースで探し、旅のルートと地形を確かめながら読むことで臨場感が増し、理解も進んだ。新しい読書のしかたかもしれない。

太宰治『津軽』は、描かれた時代も場所もそれほど遠くない。私は若いころからの太宰のファンだが、彼の故郷を一度も訪ねていないことに気づいた。今回のコロナ禍で、気になる場所には行けるときに行っておくべきだと痛感した。春になったらさっそく津軽を旅しようと思う。

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