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【41- 経済】【経済の新しい潮流】不確実な時代は「デタラメ経営」が生存確率を上げる|長内厚

文・長内厚(早稲田大学大学院経営管理研究科教授)

ムダとデタラメの大切さ

新型コロナウイルス感染症の広がりにより、多くの犠牲者が出ただけでなく、経済的にも世界的規模で多くの人々が苦しめられている。これは極めてシリアスな事態であり、とても真面目に考えなければならないことである。

しかしコロナ後の社会に適応するための経済活動やイノベーションを考えるとき、その「真面目さ」はあだになるかもしれない。むしろ求められるのは「不真面目さ」や「デタラメな行動」かもしれないのだ。経済状況が悪い現在、効率化を唱える経営者が多いが、経営学者として筆者は、不確実な時代だからこそムダとデタラメの大切さを強調したい。

新型コロナは世界中に広がり、全ての国で、新たな生活様式、新たな仕事のスタイルへの大きな変革が模索されている。変化の中には、コロナ収束後に元に戻るものもあるだろうが、リモートワークのように今後の仕事のスタンダードとなる不可逆性のあるものもある。

こうしたタービュラント(大荒れ)な環境変化を、我々はいかに乗り越えていくべきか。きちんとみんなで考え、データを精査し、努力して、素晴らしい計画を立てれば良いのであろうか。実は、こうした「真面目」な取り組みは往々にして変化する状況に対応できないばかりか、むしろ足を引っ張るのである。

世の中の変化が極めて激しく、全く予測できなかったようなことが起きているときに、過去のデータは役に立たないし、過去のデータや理論を基に将来を予測しても当たりはしない。経済学者のバートン・マルキールは45年前からランダムウォーク仮説を唱え、「物事の過去の動きからは、将来の動きや方向を予測することは不可能である」としている。不確実性の高い短期の株式取引は、予測をするよりダーツを投げて投資銘柄を決める方がマシと、理論的に特定銘柄を選ぶよりも、複数銘柄への投資を支持している。

経営学の世界でも、ワードやライカーらが1995年に書いた「セカンド・トヨタ・パラドックス」という論文によれば、徹底的に効率化しムダをなくしたトヨタが、車体のデザイン開発のプロセスだけは、意思決定を遅らせ、ムダを許容しているという。流行の変化に機敏に対応するためには、デザイン開発には冗長性が必要だという分析だ。

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