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安倍長期政権がもたらした弊害

文・望月衣塑子(東京新聞記者)

 第1次内閣を含めた安倍晋三首相の通算在職期間は2019年11月に桂太郎内閣を超えて憲政史上最長となり、同年末には第2次内閣発足から数えて8年目に突入する。安倍首相の「得意分野」という外交では、1年ごとに首相が交代していた頃に比べれば、国際的なプレゼンスも交渉力も高いはずだが、拉致問題や領土問題で結果を出せていないどころか、対米追従の結果、農畜産と防衛分野で大きな負担を国民に強いているのが実態だ。

 私は武器輸出解禁と米国製兵器の「爆買い」を取材してきた。日本の2019年度の防衛予算は5兆2,500億円を突破し、これには総額1,757億円超といわれるイージス・アショアなどのミサイル防衛システムの購入費が含まれている。

 対米交渉はトランプ大統領に押し込まれている。2019年9月の日米貿易協定交渉では、日本が米国から購入する牛肉・豚肉の関税について、TPP(環太平洋パートナーシップ)並みまで引き下げることで合意したが、日本が求めていた自動車関係の関税撤廃は棚上げされ、再交渉の時期すら明記されなかった。安倍首相は会談後、「自動車関係の追加関税を課さない趣旨を確認した」と“成果”を強調した。

 だが、それは1年前に武器の爆買いで1度阻止したはずだ。2018年9月、国連総会後の会見でトランプ大統領は「貿易赤字はもう嫌だと日本に言ったら、日本はすごい量の武器を買うことになった」と述べ、その後、貿易格差是正のため、F35AB戦闘機計147機に、総額1兆5,000億円が費やされることがわかった。官邸周辺を取材すると、乗用車の輸入関税を2.5%から25%へ引き上げることを検討していたホワイトハウスを思いとどまらせるために切った「カード」だという。つまり、自動車関税で日本は2枚もカードを切らされたのだ。完全に負けである。2019年のG7で約束したトウモロコシの爆買いもしかり。安倍首相は「害虫対策の観点で輸入が必要」と説明したが、輸入量は害虫被害を大きく超える。

 他の外交でも成果がない。トップ会談を重ねたロシアとは、平和条約・領土問題交渉が進まず、2019年度の外交青書からは、北方四島にからみ「日本に帰属する」の記述が消えてしまった。北朝鮮とは、交渉の糸口すら見えず、拉致問題の解決の見通しは立たない。徴用工訴訟の大法院判決をきっかけに輸出管理強化にいたった日韓関係も1965年の国交正常化後で最悪だ。

 首相官邸に権限が集中した結果、外務省の力が相対的に低下し、国会議員や民間のチャンネルは細り、交渉の弾力性を失っている。9月に国家安全保障局長が外務省出身の谷内正太郎氏から、警察庁出身の北村滋・前内閣情報官に交代したことで、この傾向はさらに強まるだろう。

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