文藝春秋digital記事TOPわたしのベスト3橘玲

【全文公開】意識や感情も進化の産物 橘玲さんの「わたしのベスト3」

作家の橘玲さんが、令和に読み継ぎたい名著3冊を紹介します。

橘玲

 ダーウィンの進化論から1世紀、1953年にワトソンとクリックがDNAの二重らせんを発見し、遺伝の仕組みを解明したことで、生き物の生態をプログラム(アルゴリズム)として記述できるようになった。これが「現代の進化論」で、知の巨大なパラダイム転換を引き起こした。

 リチャード・ドーキンスの世界的ベストセラー『利己的な遺伝子』は、この“革命”を一般読者に向けてわかりやすく解説した記念碑的著作。遺伝子の「目的」は自らの複製をできるだけ多く後世に受け渡すことで、ヒトはそのためのヴィークル(乗り物)にすぎないのだ。

 ミツバチのような社会性昆虫の解明から始まった進化生物学は、その後、魚類や鳥類、哺乳類、霊長類などの生態へとその領域を拡大していった。人間(サピエンス)が「現代の進化論」の標的になるのは時間の問題だった。

 進化心理学では、直立歩行や体毛の喪失のような身体的な特徴と同様に、よろこびやかなしみ、愛や憎悪なども進化の過程でつくられた心のプログラムだと考える。

ここから先は、有料コンテンツになります。今なら初月無料キャンペーン実施中! 今後、定期購読していただいた方限定のイベントなども予定しています。

★2020年1月号(12月配信)記事の目次はこちら

 スティーブン・ピンカーの『人間の本性を考える』は、「肌の色は遺伝しても心(脳)が遺伝することなどあってはならず、知能や性格はすべて環境によって決まる」という「空白の石版」理論を徹底的に批判し、意識や感情も進化の産物として科学的に解明できることを示す。

 進化心理学は当初、「科学の名を借りた差別」としてはげしい批判を浴びたが、脳神経科学や分子遺伝学などからも膨大な証拠(エビデンス)が積み上げられたことで、もはや(まともな科学者なら)誰ひとり反論できなくなった。

 だがどれほど科学が進歩しても、人間の複雑怪奇な心理を解明しつくすにはまだ長い時間がかかるだろう。ドストエフスキーの『悪霊』に登場する、虚無的なスタヴローギンをはじめとする魅力的な登場人物たちは、心の内のとてつもなく暗い深淵をいまも私たちに突きつけている。



【編集部よりお知らせ】
文藝春秋は、皆さんの投稿を募集しています。「#みんなの文藝春秋」で、文藝春秋に掲載された記事への感想・疑問・要望、または記事(に取り上げられたテーマ)を題材としたエッセイ、コラム、小説……などをぜひお書きください。投稿形式は「文章」であれば何でもOKです。編集部が「これは面白い!」と思った記事は、無料マガジン「#みんなの文藝春秋」に掲載させていただきます。皆さんの投稿、お待ちしています!

この続きをみるには

この続き: 0文字
この記事が含まれているマガジンを購読する
政治家や経営者のインタビュー、芸能人の対談、作家のエッセイ、渾身の調査報道、心揺さぶるノンフィクション……発行部数No.1の総合月刊誌『文藝春秋』が、あなたの人生を豊かに彩るコンテンツをお届けします。シェアしたくなる教養メディア。

文藝春秋digital

月額900円

月刊誌『文藝春秋』の特集記事&ウェブオリジナル記事が読み放題。2019年9月号以降の過去記事もアーカイブ。記事単体の購入よりもお得です。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

記事へのご意見・ご感想をお待ちしています。「#みんなの文藝春秋」をつけてご自身のnoteにお書きください。編集部がマガジンにピックアップします。皆さんの投稿、お待ちしています!

ありがとうございます!
11
シェアしたくなる教養メディア。100年近くの歴史がある総合月刊誌「文藝春秋」が、あなたの人生を豊かに彩るコンテンツを毎日お届けします。

こちらでもピックアップされています

文藝春秋digital
文藝春秋digital
  • ¥900 / 月

月刊誌『文藝春秋』の特集記事&ウェブオリジナル記事が読み放題。2019年9月号以降の過去記事もアーカイブ。記事単体の購入よりもお得です。

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。