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【連載】EXILEになれなくて #3|小林直己

第一幕 LDHに なぜ人は人生をかけようと思うのか?


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五場 LDHの成り立ち

 LDHは、EXILEオリジナル・メンバーが、夢を叶えるために生まれた。

 1999年、HIROは、MATSU、ÜSA、MAKIDAIをはじめとするメンバーとともに、J Soul Brothersというダンス・アンド・ヴォーカルグループを始動する。その後、2001年にヴォーカルを加え、EXILEと改名する。そして、2003年にLDHを創業。アーティストはEXILEのみ。メンバー自らがスタッフ業務も兼ねながら、スタッフとともに一歩ずつ歩んでいった。同年にはアルバム『EXILE ENTERTAINMENT』で初めてのミリオンセラーを記録し、紅白歌合戦にも初出場。そして、ダンス・アンド・ヴォーカルスクールEXPG(現EXPG STUDIO)を立ち上げる。翌年に、初のアリーナツアーを行い、ここから、EXILEの快進撃が続いていく。

 2006年には、新パフォーマーとしてAKIRAが、また、全国でヴォーカル・オーディションを行い1万人の中から選ばれたTAKAHIROが、新たにメンバーとして参加し、EXILE第二章が幕をあける。2007年には、定期的に演劇の公演を行う「劇団EXILE」の立ち上げ、飲食店第一号となる「中目黒KIJIMA」のオープン、ストリート・ファッション・ブランド「24karats」がスタートする。2008年に、EXILE PERFECT YEARと掲げ1年を通じツアーやイベント、雑誌「月刊EXILE」の創刊などを行い、ここから、6年に一度となる「PERFECT YEAR」がスタートする。そして、2009年に、新メンバーが加わり、総勢14名でEXILE第三章の幕を切る。ここから、僕もメンバーとして参加した。

 グループとして、大きな夢を叶えながら、メンバーそれぞれの個性を尊重し、個々自らが「言い出しっぺ」となりプロジェクトとして動かしていく。その個人プロジェクトで見出した可能性を、グループの新たな力として取り入れ、進化していく。EXILEはそのようにして、変化と進化を繰り返し、突き進んできた。

 翌2010年には、三代目 J SOUL BROTHERSを結成。ここから、LDHの中に、EXILEの想いを受け継ぐ「EXILE TRIBE(エグザイル・トライブ:EXILEの一族)」と総称される、新たな世代のアーティスト・グループが次々に生まれていった。その後、GENERATIONS・THE RAMPAGE・FANTASTICS・BALLISTIK BOYZといったEXILE TRIBEの各グループが生まれた。

 ほとんどのグループが、それぞれEXILEと兼任するメンバーを擁しており、各グループにて、EXILEが理念とした「Love, Dream, Happiness」を世代を超えて伝えていくべくリーダーとなって、メンバーと様々なことを共有し合う。そして、EXILE自体も、2014年にはパフォーマー・オーディションを開催し、新メンバー加入を経て、現在は19名体制となった。

 今ではEXILE=LDHという形に近い構造となっており、EXILEメンバーであり、EXILE TRIBEのリーダーも務めるAKIRAは「いつかは、EXILE TRIBEがEXILEを超えるべきだと思う」という言葉をインタビューで発している。その点からも、LDHは新たなフェーズに入ってきたと感じることができる。EXILEに触れ夢が生まれ、EXILEとともに夢を叶えていった僕たちは、新たな道を生み出す、その前夜に立っている。僕は、真っ直ぐな瞳で前を見据え、新天地への不安を人生の楽しみだと言い聞かせながら、まっさらな大地に駆けていく。そして、このコロナ禍における僕たちの役目はなんなのか、ひいては、エンタテインメントの役割とは、そんな問いに正面から向き合っている。

六場 EXILEがくれた夢

 僕が、EXILEのエンタテインメントに初めて触れたのは、2006年に行われたEXILE VOCAL BATTLE AUDITION 2006 ~ASIAN DREAM~のファイナル。武道館で開催された、EXILEの新ヴォーカルを決定するオーディションの決勝戦だった。その半年ほど前、EXILE AKIRAとクラブで出会い、ダンサーとしてお互いが刺激されたことで意気投合し、同じダンスチームになっていた僕は、数ヶ月前にEXILEに加入したAKIRAの誘いを受け、その日、武道館に足を運んだ。

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