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【27-国際】【覚醒した中国】米中衝突 南太平洋発の「第2のキューバ危機」は起きるか|関口高史

文・関口高史(軍事史研究家)

世界規模での「中国化」

我が国唯一の同盟国、米国は現在、軍事力整備の指向を転換している。米国は何を恐れ、何を守ろうとしているのか。これを我が国周辺の問題に限定すれば、なかなか見えてこないかもしれない。しかし米中角逐のテンプレートを南太平洋にずらせば鮮明に見えてくるものがある。

中国の急激な勢力拡大が米国を中心とする関係国との最前線を形成し、もはや脅威を顕在化させているからだ。

中国は2019年、ソロモン諸島の親中派の政治家たちと政権獲得後の支援を約束、その見返りとして台湾との国交断絶に成功した。中国が有力政治家たちを買収したとの報道もある。また経済の領域でも島嶼国に2005年から2009年の5年足らずで40倍近くも支援を行い、今でも、その勢いは止まらない。中国は、南太平洋では安い労働力の提供ではなく、徹底した投資で島嶼国を「債務の罠」に陥れていると指摘される。さらに中国は水産業や観光業、鉱物資源開発、そして海洋開発や宇宙開発に力を入れる。世界規模での「中国化」がここでも進んでいるのだ。では最もコアな軍事領域の脅威についても具体的に考察していこう。

太平洋の「矛」と「盾」

ソロモン諸島と台湾との国交断絶後、中国が繰り出した最初の一手はホニアラ国際空港周辺の土地購入と対岸ツラギの土地借用だった。これらは中国企業の名で行われた。ツラギ借用は未然に防がれたが、中国の意図とは何だったのか。

それは最新鋭大陸間弾道ミサイル「東風41(DF-41)」の存在からうかがい知れる。これの射距離1万4000キロはツラギと米国の首都ワシントンとの距離にほぼ相当するからだ。しかも中国の核弾頭数は増加傾向にあり、南太平洋への配備の蓋然性も高まる。加えて中国は096型(唐級)原子力潜水艦から発射可能な弾道ミサイル「巨浪3(JL-3)」の装備化を急ぐ。これが実現すれば南太平洋から米国全土を射程圏内におさめることもできるのだ。

ソロモン諸島に次いで台湾と国交を断絶し、親中政策をとるキリバスは世界第3位の排他的経済水域を持つ。そこで行われている中国の海洋開発、中でも海洋調査は潜水艦の航行に必要な資料を得る絶好の機会となり、建設計画がある人工島なども中国海軍の潜水艦の寄港地として利用することができる。

つまり中国は現在、米国の政経中枢を人質にとる、そのオプションを握ろうとしているのだ。これこそ正に「第2のキューバ危機」なのである。

米国は中国本土からの直接的な核攻撃対処を重視してきたが、この根底を覆す事態が生起するのだ。また中国には赤道近くの島嶼が人工衛星発射基地に適しているという大義名分がある。よってロケットの主要部品を南太平洋の島嶼へ配置するには何ら問題もない。

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