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東大よりハーバード 日本のエリート高校生は海外を目指す

文・加藤紀子(教育ライター)

 内向き志向と評される日本の若者だが、2017年度の大学生の留学はここ数年間で約3倍の10万人超、高校生の留学も過去最高の4.7万人となった。短期の国際交流が多いとはいえ、こうした海外での体験をきっかけに、大学から海外へ進学する動きも目立つようになってきた。海外トップ大への進学をサポートする塾「Route H」の責任者・尾澤章浩氏によると、ハーバード大に出願している日本人は、関係者の話ではこの数年間で2〜3倍に増えているとのこと。また、東大と海外トップ大の両方に合格した学生は、1学期だけ東大に通い、秋からは海外大に進むという。

 東大合格者数が日本一の開成学園でも、「海外での教育を体験してみたい」と、夏休みには70人以上が、全寮制の名門校などが主催するサマースクールに留学する。ハーバード大と東大両方で教授を務めた経験をもつ柳沢幸雄校長は、「最近では高校1年生の段階で、学年の約1割近い30人強ほどの生徒が『可能であれば海外大に行きたい』と考えています」と語る。

 海外大への進学には4年間で最大3,000万円ほどの高額な学費が足かせとなるが、ユニクロの柳井正会長やソフトバンクの孫正義会長が私財を投じた奨学金制度を立ち上げるなど、経済的な支援が充実してきたことも追い風になっている。

 柳沢氏が開成の校長に就任したのは8年前。ハーバード大から来た校長が着火材となり、就任1年目からイエール大学をはじめとするアメリカの名門大へ3人が進学した。

「『あの先輩が行けたなら、俺でも行けるんじゃないか』と感じたようで、私のところへ受験のノウハウを相談にくる生徒が増えました。国際交流留学生委員会という組織を立ち上げ、教員が海外大志望の生徒をサポートする体制を整えました。海外大の入試担当者が来日して説明会を行なうカレッジフェアを年2回、先輩によるサマースクールの報告会も毎年開催しています。学校が集団で引率するような海外研修は行なっていませんが、自分で英語の出願書類を書き、サマースクールに挑戦する生徒の数は、就任以来増え続けています」

 この数年で、受験生の親や保護者の意識も変わってきている。「今の親はちょうど平成の30年間、日本経済の凋落を経験してきた世代です。人口も減り、この先日本にとどまっても、わが子は自分と同じ生活レベルを維持できないのではと不安を感じている人も多い。だからこそ彼らは『海外で学べる可能性があるなら行かせてみよう』と考えるようになってきたのです」(柳沢氏)

 さらに最近では、こうした変化が地方にも広がり始めている。熊本県では、海外への進学に挑戦する高校生等を支援する「海外チャレンジ塾」を開講している。英語力の強化、出願書類へのアドバイスなどを無料で行ない、海外トップ大に進学する際には100万円を支給する制度も設けている。1期生はMITとハーバード大に合格し、MITに進学した。

 また、実際に海外大で学ぶ学生たちが長期休暇を利用してキャラバン隊を結成し、海外大の情報に触れることがない地方に出向き、海外大進学という選択を身近に体験してもらう活動も広がっている。こうしたイベントをきっかけに、地方の高校生にも海外大に“先輩”ができ、SNSを通じて情報を得やすくなったこと、英語の対策授業などをオンラインで受講できるようになったことも、海外大を目指す人の裾野が広がりつつある要因といえる。

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