藤崎彩織 ねじねじ録|#9 見えない敵
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藤崎彩織 ねじねじ録|#9 見えない敵

デビュー小説『ふたご』が直木賞候補となり、その文筆活動にも注目が集まる「SEKAI NO OWARI」Saoriこと藤崎彩織さん。日常の様々な出来事やバンドメンバーとの交流、そして今の社会に対して思うことなどを綴ります。

Photo by Takuya Nagamine
■藤崎彩織
1986年大阪府生まれ。2010年、突如音楽シーンに現れ、圧倒的なポップセンスとキャッチーな存在感で「セカオワ現象」と呼ばれるほどの認知を得た4人組バンド「SEKAI NO OWARI」ではSaoriとしてピアノ演奏を担当。研ぎ澄まされた感性を最大限に生かした演奏はデビュー以来絶大な支持を得ている。初小説『ふたご』が直木賞の候補になるなど、その文筆活動にも注目が集まっている。他の著書に『読書間奏文』がある。

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見えない敵 

 3歳になる息子は最近、空を切るように手を動かしながら「エイシャートウッ!」と言って何かと戦っている。
 私に敵の姿は見えないけれど、普段は30cm程の段差でさえ手をついて降りるような慎重な性格の彼が、この時ばかりは勇敢な戦士になっているようだ。
 彼は戦いになると自分で生み出したキャラクター、「チクチクマン」に変身し、人差し指を立てて「チクチクチーク」と言いながら何者かを倒し始める。
 接近戦の時は直接人差し指の針で相手を刺しに行き、遠隔戦になると鉄砲の一種である「チクバン」を指から放出する。
 それでも倒せない時は手から「チクロケット」を放つ。
 誰から教わったのか、いつの間にか鍛錬を続け、攻撃の仕方も進化を遂げている。
 息子は見えない敵と戦っている時、とても強い。諦める事はないし、恐怖に慄く事もない。何度だって果敢に立ち向かっていく小さな背中は、日に日に頼もしくもなっている。

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