同級生交歓

同級生交歓――徳島市立富田中学校(昭和49年卒)【全文公開】

人の一生を左右するのは校風か、学歴か、友人か。意外な組み合わせ、納得の顔ぶれが並ぶ“誌上同窓会”。「文藝春秋」の名物グラビア企画です。

(右から)
京都大学霊長類研究所長 湯本貴和

三越伊勢丹参与 富永邦夫

東京大学大学院薬学系研究科長・学部長 一條秀憲

富士通代表取締役副社長 安井三也

同級生交歓・見開き サシカエ

愛知県犬山市 京都大学霊長類研究所にて(撮影・白澤正)

 我々は、徳島市立富田中学校を昭和49年(1974年)に卒業した。

 博覧強記の人、湯本は、中学の頃から探求心旺盛で、昆虫、草花、鳥、化石、天体など万物に興味があった。しかも「四書五経」「戦国策」といった、妙な本を愛読していた。高校時代はサル学の今西錦司先生にハマり、京大では植物生態学を足掛かりに、あらゆる生き物に関心を拡げ、熱帯雨林でのフィールドワークを世界中で重ねた。動植物すべてに注ぐ眼差しは、人に対しても同様で、温かく優しい。

 富永は畏友である。頭の回転が速く知能指数は開校以来との噂があった。運動神経も抜群。日没まで共に草野球で遊び、塾に遅刻し、先生を怒らせた。近所のお好み焼き屋に行くと(これが1枚20円で、安くて実に旨かった!)お店のおばあさんをからかい、鉄板から直接お好み焼きを投げ付けられとっさに頭を低めて避けていた。こんな悪ガキが、天下のイタリア三越社長となり、奥様とトレビの泉で生涯の愛を誓い、日本中のセレブを相手に外商のトップになったのだから、世の中わからない。

 一條は、湯本や富永とタイプが異なり、貴公子と呼ばれた。色白で背が高く、勉強もできる優等生だったが、ガリ勉タイプではなく、草野球もすればお好み焼きも一緒に食べた。だから女生徒には断然もてた。東京医科歯科大で生化学・分子生物学を志しスウェーデンに留学。30代で母校の教授、17年前に東大教授に。今秋には見事、紫綬褒章を受章。中学時代から趣味の釣りはいまも続けるも釣果は学生に誇れない。

 安井は、(3人の話によれば)絵に描いたような文武両道。中3で柔道2段。作文は、文部大臣賞や全国1席など、賞荒らしの常連。が、大人になれば意志薄弱な只の人。「これまで人との出会いに大いに恵まれた」とは本人の弁。(安井)



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