【43-経済】日本企業は今後も「働かないおじさん」を再生産し続けるのか|新志有裕
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【43-経済】日本企業は今後も「働かないおじさん」を再生産し続けるのか|新志有裕

文・新志有裕(弁護士ドットコムニュース編集長)

やがて働かなくなる構造

日本企業に長年根付く「働かないおじさん」への包囲網が強まっている。

「働かないおじさん」とは、終身雇用、年功序列型賃金、新卒一括採用といった「日本型雇用」のもとで、勤続年数が長くなり、賃金やランクが高いにもかかわらず、それに見合った働きをしない中高年男性のことだ。家計を背負う正社員として、男性ばかりであることも特徴的だ。

イメージしやすい例として、2020年8月から9月にかけて、テレビ東京系列でドラマにもなった漫画「働かざる者たち」(作者・サレンダー橋本)の登場人物をあげてみたい。大手新聞社の技術局工程部にいる八木沼は入社25年目のベテラン。出世しないまま、様々な部署をたらいまわしにされ、全く働かなくなった。

ただ、勤続年数は長いため、出世して部長になった「同期」のもとを訪れ、まるで自分は部長と同格だとアピールするかのごとく、「お前も少しは遊べよな」と上から目線で話しかける。そして、周囲からの冷ややかな視線。私も似たような光景を新聞社に勤務していた10年ほど前に何度も見たことがある。

このような「働かないおじさん」は本当に働きに見合わない高待遇なのか。「ホワイトカラー職種別賃金調査」(労政時報、2020年1月10日・24日号)に、「働かないおじさん」が一定割合含まれていると考えられる「部下なし管理職」についてのデータがある。「部下なし管理職」がいると回答した企業は、全産業の63.9%にものぼる。このうち36.4%の企業で、部下のいる管理職と部下のいない管理職とで待遇差がついているが、年収差は7~8%程度で、大した差ではない。管理職同等の高待遇といえるだろう。

なぜ「日本型雇用」のもとで「働かないおじさん」が生まれてしまうのか。そこには、職務内容を決めず、組織の一員として、会社の都合にあわせて仕事内容を決める「メンバーシップ型雇用」の特質が影響している。

新卒入社後、同期入社の仲間たちと、管理職に向けた出世レースを繰り広げる。一定の年次になると、上に昇れない人たちが出てくるが、彼らは会社の都合で様様な職場をたらいまわしにされた結果、軸となる専門性が身に付いておらず、賃金にみあった仕事ができない。それでも、年功序列、終身雇用のもとで、年収があまり落ちず、クビにもならない。すると、向上心がなくなり、やがて働かなくなる。こんな構造だ。

「メンバーシップ型雇用」のもと、長く安定的に働き続けることは、企業にとっても、従業員にとっても一定のメリットがあるのだが、当人の適性や意向を無視した人事異動をしていると、その弊害が出てしまう。組織の高齢化が進む中、問題はいっそう深刻になっている。

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