著者は語る

『地面師たち』著者・新庄耕さんインタビュー

 他人の土地を勝手に転売し、莫大なカネを騙し取る「地面師」。五反田の土地取引を巡って、大手住宅メーカーの積水ハウスが約55億円の被害に遭った事件も記憶に新しい。ブラック企業の不動産営業マンを描いたデビュー作『狭小邸宅』、マルチ商法の裏側を取り上げた『ニューカルマ』など、現代社会の暗部を書き続けてきた新庄耕さんが、今回題材に選んだのは、その地面師たちだ。

「この情報化社会の中で、積水のような大企業が、“なりすまし”という、非常にアナログなやり方で一杯食わされた事実は、とても印象的でした。ただ、報道を見ていくうちに、地面師たちの素性やその手口にも興味を覚えたんです。なぜ彼らはここまでして人を騙すのか。逆に騙されてしまった被害者の心理にも同じくらい思うところがあった。そこを掘り下げていくことで、騙す側と騙される側の人物造形が見えてきた気がします」

『地面師たち』の主人公は、ある事件で母と妻子を亡くした辻本拓海。大物地面師・ハリソン山中と出会い、元司法書士の後藤、土地の情報を集める図面師の竹下、所有者のなりすまし役を手配する麗子らと不動産詐欺に手を染めていく。ひと仕事を終えた彼らが次に狙いを定めたのが、市場価格100億円という一等地だ。一方、定年を控えた刑事の辰は、以前に逮捕したものの不起訴に終わったハリソン山中を独自に追っていた。地面師たちの素顔、薄氷を踏む取引現場、難航する辰の捜査……圧倒的なリアリティとダークな疾走感で物語は展開されていく。

「最初に編集者とA4用紙に『こんな感じで』と書いた大きな流れはほぼ踏襲していますが、難しかったのは、設定も含めて、どれだけ臨場感を出せるか。不動産関係者や行政書士など様々な方に取材を重ね、裁判資料もずいぶん読み込みました。地面師対策セミナーにも参加しましたね。とはいえ、法律用語ばかり出てきても面白くない。積水事件で逮捕された大物地面師と接点があった方からは、彼に小指がないことを教えてもらいましたが、こうしたリアルな情報が結構役に立ちました。所有者が本人かどうか確認する場面でハリソン一味が盲点を突かれて内心慌てるというエピソードなども、実際の事件からヒントを得ています」

 結末には少し含みを持たせている。

「他の作品もそうなのですが、単純な勧善懲悪の話にはしたくなかった。彼らの行く末は是非、読者の皆さんの想像力で膨らませて頂きたいと思っています」

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