
「雅子さまのファッションが変わった」同年代女性記者が見た“新皇后の26年”
「こんなに明るくて華やかなデザインの服を着られるようになったんだな」「ホワイトのスーツは、新調されたんじゃないかしら」。同年代の女性記者2人が雅子さまのファッションを徹底分析!/佐藤あさ子(皇室担当記者)×矢部万紀子(コラムニスト)
雨が止んで空に虹がかかって
矢部 「即位礼正殿の儀」の日は、朝から半蔵門だったのですか?
佐藤 6時半過ぎから半蔵門で待っていたら、ダウンを羽織っても肌寒くて。深紅の皇后旗がはためく黒のセンチュリーロイヤル(トヨタ製の皇室専用車)が通ったのは7時頃。土砂降りの中、車の窓を開けて手をふる雅子さまの笑顔は、とても晴れやかでパッと輝いて見えました。
「饗宴の儀」に向かう雅子さま
矢部 私はテレビを見ていたのですが、笑顔で手を振ってらっしゃいましたね。声援を受けることに喜びを感じているように見えました。
佐藤 残念だったのは、御帳台(みちようだい)の帳(とばり)が開けられたときの雅子さまのお顔が拝見できなかったことです。
矢部 私も見たいと思ったのですが、カメラが向けられた時はもう開いていましたね。
気になったのは、御帳台に立っていた時の雅子さまの瞬きです。10秒ほど数えたところでカメラがまた陛下に切り替わってしまったのですが、雅子さまはかなり頻繁に瞬きをしていました。その点、陛下や秋篠宮さまはほとんど瞬きをしていなくて、やはり「皇室の血」と言うべきか、「天皇家に育った人」は、こういう時に瞬きをしないのだなあと思いました。民間から嫁がれた雅子さまは、こういうこと一つひとつに努力が必要だったのでしょう。
佐藤 本当に大変な道のりだったと思います。儀式直前、まるで計ったようなタイミングで雨が止んで空に虹がかかって、感動しました。雅子さまは、皇太子妃時代にさまざまなことがあったけれど、その先にこの虹があったのか、と。
天皇皇后は10月22日、国内外からの約2,000人の賓客に見守られながら、「即位礼正殿の儀」に臨まれた。晴れやかな舞台で注目を集めたのが、雅子さまの華やかなファッションだ。
佐藤あさ子氏は、週刊誌、月刊誌、女性誌で活躍するフリーライター。著書に『雅子さまと愛子さまはどうなるのか?』(草思社)。
矢部万紀子氏は、1983年に朝日新聞社に入社、「週刊朝日」「AERA」などに所属し、皇室報道に長く携わった。2017年からフリーに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)。
ともに1961年生まれで男女雇用機会均等法「前夜」の世代。雑誌ジャーナリズムの世界で皇室を取材する2人が、ファッションから雅子さまの歩みを振り返る。
原点はグリーンのジャケット
矢部 雅子さまの服、最近変わってきましたよね。私が「変わったな」と思ったのは、9月の「全国豊かな海づくり大会」のレセプションで着ていたホワイトのスーツと、10月の「海外日系人大会記念式典」でのオレンジ色のスーツです。
「ああ、雅子さまはこんなに明るくて華やかなデザインの服を着られるようになったんだな」と感慨深かった。きっと、気分がずいぶん前向きになられたんだろうなって。
佐藤 ホワイトのスーツは、新調されたんじゃないかしら。襟元や袖のフリルは、森英恵(はなえ)さんが仕立てた、御婚礼のときのローブデコルテを思い出しました。雅子さまの知人も、「あのスーツ、すごく素敵だったと思いません?」って、なんだか嬉しそうでした。
矢部 ここ数年の雅子さまは、青系の落ち着いた色合いの服を着ることが多かったではないですか。だから、明るい色合いの服を着てくださるのって、嬉しいです。
佐藤 90年代には原色に近い赤や青の鮮やかな色の服を着ていらしたけれど、次第にまわりに合わせたようなパステルカラーの服が増えましたよね。淡い色も素敵だけれど、ビビッドな色もお似合いです。
矢部 私が「雅子さまのファッション」と言われてまず思い浮かべるのは、1994年に天皇陛下と雅子さまがお二人で初めての海外訪問で中東に行かれたときのグリーンのロングジャケット。いま写真を見直しても、すごく似合っています。
佐藤 伊藤和枝さんがデザインしたものじゃないかしら。私もこれはとても素敵だと思う。砂漠の赤にグリーンのジャケットのコントラストが鮮やかでした。
矢部 本当のところを言うと、これを見た当時はそれほど感動はしなかったんです。なぜかと考えてみると、雅子さまはハーバード大→東大→外務省という抜群の経歴で「究極のキャリアウーマン」とか「エリート中のエリート」と評されていました。しかも背も高く、大変な美人。彼女だったらハイセンスな着こなしも当たり前だろうな、と思ったわけです。
佐藤 期待値が高かったですよね。
お似合いになるだけじゃなくて、イスラム教の戒律を考えた体の線を隠すデザインで、イスラム教徒にとって聖なる色とされている緑を使われている。「皇室外交」という夢を抱いて結婚された雅子さまを象徴するジャケットでした。
「ご回復」をドレスで読み解く
佐藤 雅子さまは皇后になってから急に元気になられたと言われているけれど、まだご療養中であることは変わりありません。お出ましは格段に増えているからご回復傾向にあると思うけれど、地方公務は1泊2日が中心だし、公務が連続しないように日数をあけるなど、スケジュールの組み方に工夫がみられます。
私は、2つのドレスから雅子さまがいつからご回復に向かうようになったか読み解けるのではないかと思っています。
1つ目が、2013年春にオランダ国王の即位式に参加された際に雅子さまが着用されていたアイボリーのローブモンタント。ギリギリまでご体調を見て参加を決められたから新調するのが間に合わなかったのか、10年以上前のオートクチュール(高級注文服)をお召しになられたのですが、よく見ると、シワが……。
矢部 着るものの優先順位がすごく下がっていらしたのでしょうね。日程をこなされるのが最大の目標だった。
佐藤 はい。でも、このオランダ訪問が自信になったのか、その年に東日本大震災の被災地である東北3県を回られているんですよ。
2つ目が、2015年にトンガ国王の戴冠式に出席されたときの、ベージュのロングドレス。レースがふんだんに使われたゴージャスなドレスで、この時初めて見たものでした。つまり、前もって服の準備ができるタイミングで参加を決断できた。雅子さまの「ご回復」はこの2つの式が背景にあったということがお召し物からもうかがえると思います。
雇均法第一世代に生まれて
矢部 ご婚約の頃から、雅子さまのファッションは注目を集めていましたよね。その頃、私は「週刊朝日」にいたのですが、取材した女性誌の編集者も「雅子さまのスカーフの特集は売れる」と言っていました。例えば当時の「女性セブン」のタイトルを見てみると、
「完全図解 雅子さん流スカーフづかい 12通りの最新テク紹介」(1993年2月25日号)
「雅子さんのスカーフ 色使い・結び方を全図解!」(同3月18日)
雅子さまは、本来とてもおしゃれな方ですよ。
スカーフづかいが話題に
佐藤 トレンチコートの襟を立てて、ベルトをキュッと縛り、肩で風を切って歩く雅子さまは本当に格好良かった。彼女が皇室に入れば、「日本は変わるかも」と思いました。
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