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スポーツに政治を持ち込む自称・右派の愚

文・鷲田康(ジャーナリスト)

 夏の甲子園大会で準優勝に輝いた星稜・奥川恭伸投手(18)や163㎞右腕の大船渡・佐々木朗希投手(17)らを擁するU‐18日本代表が「U‐18ワールドカップ」参加のために渡韓したのは2019年8月28日のことだった。

 この際に騒動となったのが、代表選手たちの着用したポロシャツから日の丸を外した日本高等学校野球連盟(八田英二会長)の決定である。

 7月に日本政府が韓国への半導体製造の材料などの輸出規制の強化を行い、これに反発して韓国国内では反日運動が激化。直前には旅行中の日本人女性が、誘いを断った韓国人青年に暴行を受けた事件なども大々的に報じられ、日韓関係が戦後最悪と危惧される情勢だった。

 その中で「韓国の国民感情に配慮して、日本を前面に出すのはやめようと思っている。日韓関係が悪化していることと、スポーツをすることは別なので、我々は真摯にプレーすることだと思う」(竹中雅彦事務局長・当時)と高野連が、通常は白地のポロシャツの袖につけてきた“日の丸”を外す決定を行った訳だ。

 無用な刺激を避けて、選手の安全を配慮した決定だったが、これに対して「過剰な忖度」とネット論壇を中心に批判が湧き上がった。テレビのワイドショーでも、あたかも国の姿勢を示す大問題であるかのように論議されると、そこで出てきたのが一部の右派をもって任ずる政治家だったのである。

「スポーツの世界で、日の丸を背負って闘う日本代表選手たちに、韓国への配慮とか必要なのでしょうか」

 こうツイッターでつぶやいたのは三原じゅん子参議院議員だった。他にも和田政宗参議院議員らが、この“日の丸外し”に疑問を呈するコメントを発した。

 高野連の処置は全く政治的決定ではない。選手の安全を配慮したものなのは明らかだ。また試合をするユニフォームから日の丸を外したのでもない。戦後最悪と言われる日韓関係の中で、日の丸をつけて戦うのはグラウンドの中だけでいいということだ。ましてやスポーツとは戦う相手がいて初めて成り立つもので、だからこそ相手に対するリスペクトは不可欠である。そういう背景の中での“日の丸外し”だった訳である。

 ところがそこで政治的な思惑や話題性に飛びついてすぐに口を挟む自称・右派の浅ましさ。選手の身を案じるより、勇ましさや日の丸の責任を押し付ける人びとにはスポーツを語る資格は一切ない。

 2020年には東京五輪を控える中で、我々がもう一度、戒めなければならないのはこうしたスポーツに政治的なナショナリズムを持ち込もうとする論調であり、それを政治的に利用しようとする政治勢力である。特に気をつけなければならないのが、五輪のメダルとナショナリズムをリンクさせることで、スポーツを政治的に国威発揚の場に利用しようというムードではないだろうか。

 オリンピックの歴史の中でスポーツと政治的ナショナリズムを連結したことで、最悪の見本と言われるのが1936年のベルリン大会である。

 別名「ナチ・オリンピック」とも呼ばれるこの大会では、33年に政権をとったアドルフ・ヒトラーが国威発揚とのちのユダヤ人虐殺につながる「アーリア人の民族優勢」を示す大会として位置づけ、メダル獲得に国家的事業として取り組んだ。その結果、ドイツは89個のメダルを獲得し、2位のアメリカの56個を抑えて圧倒的な勝利を収めている。この大会の模様はレニ・リーフェンシュタール監督の指揮で「民族の祭典」と「美の祭典」として映像化され、ナチスドイツのプロパガンダとして国内外に大きな成果を収めることとなったが、その後の歴史的な惨劇は説明の必要もないはずだ。

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