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丸の内コンフィデンシャル<財界インサイドレポート>

日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する。

★ドンの痛恨事

富士フイルムホールディングス(HD)のドン、古森重隆会長兼CEOが6月の株主総会で取締役からも退き、最高顧問になる。

日立製作所の画像診断機器事業の買収が完了し、富士ゼロックスが富士フイルムビジネスイノベーション(BI、真茅久則社長兼CEO)に4月1日付で社名変更する大きな節目を引き際に選んだ。

助野健児社長兼COOが代表権のある会長兼取締役会議長、メディカルシステム分野を長年率いてきた後藤禎一取締役が社長兼CEOに就任する。

退任会見で「やりたかったことの一つ」と述べたように、古森氏最大の痛恨事は、米ゼロックス買収の失敗だ。

18年1月、米ゼロックスの買収を発表し、一体運営による収益向上を宣言した。だが、「物言う株主」として知られるカール・アイカーン氏らが反対。米ゼロックスが売買契約を破棄したことで訴訟に発展し、買収交渉は2年近く膠着状態に陥った。

結局、19年11月、米ゼロックスとの合弁会社、富士ゼロックスの米ゼロックスの持ち分(25%)を1株2500円で買い取り、57年間に及ぶ合弁事業はピリオドを打つこととなった。

米ゼロックスの買収失敗の代償は小さくない。米ゼロックスとの資本関係の解消に伴い、ゼロックスブランドは使えなくなる。

富士フイルムの複合機の世界シェアは9%。リコー(山下良則社長)やキヤノン(御手洗冨士夫会長兼社長)などに次いで第5位だ。英語圏ではコピーを「ゼロックスする」と呼ぶほど知名度は高く、100億円のブランド使用料以上の有形無形のメリットがあった。永年親しまれてきたブランドを失うことが致命傷になることもあり得る。

また現在は富士フイルムの工場で生産した複合機をゼロックスに供給しているが、ゼロックスが調達先を他のメーカーに切り替えれば、工場の稼働率はガタ落ちだ。

古森氏は退任会見で「気力、知力は衰えていない」と語っていたが、「BIの業績が急降下すると古森最高顧問がCEOに復帰する」(外資系証券会社のアナリスト)と予想する向きもある。

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古森最高顧問

★「iモード社長」の手腕

出版・ネット事業を展開するKADOKAWAが6月下旬の社長交代人事を決めた。松原眞樹社長からバトンを引き継ぐのは夏野剛取締役。携帯電話サービス「iモード」の生みの親とも言われるネット業界の有名人だ。

同社は14年10月に「ニコニコ動画」で知られるドワンゴと経営統合。出版とネットの融合という挑戦的な目標を掲げた。以来、社内で一貫して隠然たる力を保持してきたのは旧角川書店の創業一族である角川歴彦会長だ。

ドワンゴ創業者の川上量生氏が統合後のカドカワ社長に抜擢されたものの、成長エンジンとして期待されたドワンゴは赤字に転落。一昨年2月、川上氏は期中にもかかわらず社長を辞任、ヒラ取締役に降格となる。

後任の松原氏は紀伊國屋書店の実力者、故松原治氏の子息。とはいえ旧日本長期信用銀行に20年余り勤めた経歴の持ち主で出版業界育ちではない。同氏はリストラ断行のための中継ぎ役との見方が囁かれていた。

夏野氏はNTTドコモ在職中にiモード事業を立ち上げた実績が最大の売り。08年6月の同社退職後は慶應義塾大学の特別招聘教授や様々な企業の社外取締役を務めたが、「経営者としての実力は未知数」との声が多かった。

夏野氏は同年12月にドワンゴの取締役に就任すると、川上氏失脚に伴いドワンゴの後任社長を任され、黒字化を果たしたことが評価を得た。

夏野氏に関してよく知られるのはその肩書の多さだ。最も多い時、上場企業だけで取締役の兼職数は合計8社にも上った。現在もUSEN‐NEXT HOLDINGS、グリー、日本オラクルなど5社の社外取締役を兼務している。公表されている5社の直近年度における取締役会開催数は計64回。うち夏野氏が欠席したのは1回だけだ。

社外取締役業を続けるのかも含め、今後、夏野氏の真価が問われることになる。

★楽天のチャイナリスク

日米両政府が楽天グループ(三木谷浩史会長兼社長)を共同で監視する方針を固めた。

中国ネット大手、騰訊控股(テンセント・ホールディングス、ポニー・マーCEO)の子会社が楽天グループの大株主になり、日米の顧客情報がテンセントを通じて中国当局に筒抜けになることを警戒したからだ。

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