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武田徹の新書時評|音楽と社会のあり方を考える

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。

2020年はベートーヴェン生誕250年に当たり、新書でも関連書が揃った。

中野雄『ベートーヴェン』(文春新書)は罵声と殴打で息子を鍛えた父など家族の紹介から始まり、名曲『英雄』『運命』も初演では失敗続きだった天才音楽家の多難な人生を辿る。モーツァルトとのニアミスや聴覚障害についてのエピソードも興味深い。

浦久俊彦『ベートーヴェンと日本人』(新潮新書)は日本独特のベートーヴェン受容がテーマだ。音楽取調所(後の東京藝術大学)の演奏会で、日本でベートーヴェン作品が初演奏された明治18年は東京で白熱灯が初めて点灯された年でもあった。著者はラジオ、レコードといった舶来の新技術と共にベートーヴェン人気が形成されてゆく過程を描き出す。

なかでも「ニッポンのベートーヴェン」を象徴するのが年末の「第九」演奏会だろう。最終楽章でシラー原作の詩『歓喜に寄す』を合唱するドラマチックな構成は世界中のファンを魅了してきたが、日本では皇紀2600年を奉祝した演奏がラジオでも中継されて以来、「第九」が師走の風物詩となってきた。

ところが、よりによって生誕250周年の年の瀬に多くの「第九」演奏会が中止されたり、合唱なしや無観客での公演を強いられたりした。もちろん新型コロナウイルスの感染を恐れてのことだ。

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