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自動車業界再編ホンダは独立を維持できるのか

文・井上久男(ジャーナリスト)

 100年に1度の変革期を迎えている自動車産業にあって、大手の一角を占めるホンダが揺れている。四輪事業の収益性が大きく低下しているのだ。

 2019年3月期決算では売上高が前年同期比3.4%増の15兆8,886億円、本業のもうけを示す営業利益が同12.9%減の7,263億円で、営業利益率は4.6%。日本の自動車大手3社の中で、トヨタ自動車の8.2%には遠く及ばないものの、日産自動車の2.7%は上回っている。

 しかし、課題はその収益構造だ。製造業としてのホンダは、四輪、二輪、発電の汎用エンジンなどのライフクリエーションの3事業で成り立っているが、売上高の7割を占める主力の四輪部門の営業利益は43.9%減の2,096億円。営業利益率は1.9%で日産よりも低い。

 しかもライフクリエーション事業は営業赤字。売上規模で四輪の5分の1にも満たない二輪が営業利益を2,916億円稼いで営業利益率が13.9%。19年1〜3月期に限ってみると四輪は530億円の営業赤字。ホンダの経営の屋台骨は二輪が支えているのが現状だ。

 四輪が低収益の理由は、過剰設備、過剰人員、開発コストの高さによるものだ。大勢の従業員を抱え、高額な設備を導入している自動車メーカーにとって、この3つは「致命傷」となりかねない。倒産寸前の経営危機に陥った日産が1999年、ルノーの傘下に入ったのも、これらの問題に抜本的なメスを入れることができなかったからだ。

 開発コストを抑えるため、他の車種との部品共通化を進めるのは、必須の戦略だが、ホンダでは遅れている。1990年代にヒットした「オデッセイ」は、「アコード」との部品共通化率が70%程度あった。しかし現在、売れ筋の「CR-V」と「アコード」の部品共通化率はわずか0.3%程度しかないという。

 ホンダ幹部が説明する。

「90年代初頭にホンダは経営危機に陥り、当時の川本信彦社長が大胆な構造改革を進めた結果、開発コストを多くかけずに造った『オデッセイ』がヒットして息を吹き返した。しかし、危機感が乏しい組織風土になってしまい、他社に比べて改革が遅れている」

 マツダは大胆な設計の共通化を進める手法「コモンアーキテクチャー」を12年に発売した「CX-5」から導入、コストを30%近く落として復活の原動力の一つとなった。トヨタも15年に発売した4代目「プリウス」から「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」と呼ばれる設計共通化戦略を進め、コストを削減した。

 しかしホンダは19年5月、部品の共通化率を高める「ホンダアーキテクチャー」を導入する方針を示したに過ぎない。新手法が適用された新車が出るのはまだ先で、マツダやトヨタに比べてホンダは10年近く遅れている。

 その理由について現役社員はこう説明する。「設計の共通化を推進しようとしたら、『業務が効率化されるとポストが減って困る』と言う幹部が、若手主導で作成した改革案を潰したこともあった。ホンダの開発部門には、行き場のない技術者崩れの管理職が増えて、こうした幹部がリスクを避け、無駄な会議ばかりをしている」。ホンダが大企業病に陥ったことを象徴する証言だ。

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