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世界経済の革命児 ジェンスン・フアン|大西康之

ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、ジェンスン・フアン(Jensen Huang=黃仁勳、エヌビディア創業者)です。

「世界経済の革命児」ジェンスン・フアン

ジェンスン・フアン

AIで私たちの暮らしを変容させつつある日本びいきの起業家

2021年4月13日、米半導体大手Nvidiaエヌビディアの創業者でCEO(最高経営責任者)のジェンスン・フアン(黃仁勳)はいつもの革ジャン姿で、プライベート技術会議に登場した。年1回のこの会議、主役のフアンは毎年、エヌビディアの技術と革ジャンを「更新」する習わしになっている。昨年の目玉は対話型AI(人工知能)「Jarvisジャービス」。フアンはジャービスにこう話しかけた。

「有名なジャンガララーメンの店を探しています。近くにあるはずなのに地図にないのです。道を教えてください。私はとてもお腹が空いています」

ジャービスは自動音声認識でフアンの英語をテキスト化し、瞬時にそれを日本語に翻訳した。人間の能力を超えた言語理解、複数言語へのリアルタイム翻訳、新しいテキスト読み上げ機能が売り物で、やりとりを重ねていくと、話し言葉に込める感情表現までコントロールするようになる。現在、自動車の対話型AIはインターネットに接続していないと使えないものがほとんどだが、ジャービスは非接続の状態でも機能する。フアンはこう言った。

「対話型AIは多くの点で究極のAIと言えます。ジャービスはあらゆる場所でAIサービスを提供できるようにします」

エヌビディアの日本の拠点は東京・赤坂にあり、フアンは日本を訪れるたびにジャンガララーメン赤坂店に行くという。

フアンが日本贔屓なのは、画像処理チップ(GPU)から始まったエヌビディアが、日本のゲーム産業とともに発展してきたからだ。最初に開発したGPU「NV1」は日本のゲーム会社、セガが販売していた3D格闘技ゲーム「バーチャファイター」などの画像を処理するビデオ・カード(パソコンの機能を拡張する基板)に搭載された。2006年に発売されたソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のゲーム機「プレイステーション3」用のGPUを共同開発しており、2017年発売の「Nintendo Switch」のGPUも任天堂と共同開発している。

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