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橘玲 フーコーの衝撃

文・橘玲(作家)

 高校2年生のとき、不良の溜まり場だった喫茶店が警察に摘発され、喫煙していた生徒が補導された。私はその場にいなかったのだが、芋づる式に名前が出て1週間の自宅謹慎処分になった。
 
 あまりに退屈だったので、家にあったロシア文学全集を手に取った。最初の『罪と罰』(新潮文庫)で、いきなりドストエフスキーの異次元世界に放り込まれた。わずかな睡眠時間を除いて、熱にうかされたようにひたすら没頭して、『カラマーゾフの兄弟』(新潮文庫)にいたるすべての長編を読んでしまった。
 
 そのなかでもっとも影響を受けたのが『悪霊』(新潮文庫)で、白日夢のなかで、退廃とニヒリズムの極致であるスタヴローギンと会話するようになった。そして、翻訳でこんなに感動するのなら、原語で読んだらもっとスゴいにちがいないと思って、ロシア文学科のある東京の私立大学を受験した。

橘玲さん

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