見出し画像

武田徹の新書時評 変わる言葉と世界

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。

変わる言葉と世界

今野真二『うつりゆく日本語をよむ』(岩波新書)が取り上げるのは、いま再び進み始めている言文一致の動きだ。

明治時代の言文一致運動は堅苦しい漢文調で書かれていた言葉を日常的に用いる口語表現に変えた。しかしその変化は言葉遣いのレベルに留まり、「書き言葉」と「話し言葉」は別系列だった。

現在の言文一致は違う。注目されるのは「打ち言葉」の存在だ。話す代わりにスマホのキーでSNSに言葉を打ち込む。こうして打ち言葉が媒介となって書き言葉の中に話し言葉が浸潤してくる。その結果、内容を圧縮して表現し、圧縮された表現をゆっくり解凍しながら読んで理解する、書き言葉が保証してきたコミュニケーション作法が失われつつあると著者は警鐘を鳴らす。

ここから先は

705字
noteで展開する「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。同じ記事は、新サービス「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。新規登録なら「月あたり450円」から。詳しくはこちら→ https://bunshun.jp/bungeishunju

文藝春秋digital

¥900 / 月

月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に配信。月額900円。(「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。今後は、新規登録なら「…

「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了しました。今後は「文藝春秋 電子版」https://bunshun.jp/bungeishunju をご利用ください