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梅志明(GLP創業者)「10歳でアメリカへ渡った中国人少年の成功物語」世界経済の革命児69 大西康之

ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、梅志明(Ming Z. Mei、GLP創業者)です。

梅志明

梅志明
GLPのHPより

10歳でアメリカへ渡った中国人少年の成功物語

1が4つ並ぶ11月11日は中国で「独身の日」と呼ばれる。中国EC(インターネット・ショッピング)大手のアリババ・グループはこの時期に毎年、大々的なセールを打つ。2021年の取扱高は5403億元(約10兆3200億円)に達した。アリババの年間流通総額は106兆円、年間の利用者は10億人に迫る(2020会計年度)。

中国政府は巨大化するアリババを脅威と見做し、規制を強化している。その影響でアリババの成長は若干鈍化しているが、国土の広い中国では小売りのEC化率が2020年時点で44%を超えており、国民の生活基盤としてすっかり定着している。

人口14億人の中国で国民が買い物の半分近くをネットで済ませているわけだが、消費者が市場やスーパーマーケットに買い物に行く代わりに、誰かが玄関先まで荷物を届けなければECは成り立たない。「届ける」役回りで急成長しているのが、シンガポールに本社を置くグローバル・ロジスティック・プロパティーズ(GLP)だ。

2016年にアリババなど五社と合計面積9万8000平方メートルの高機能倉庫を賃貸する契約を結んだのを皮切りに、中国最大の倉庫オペレーターにのし上がり、日本でも楽天グループなどEC向けの物流事業を展開している。今では世界17ヶ国でEC倉庫を中心に6700万平方メートルの不動産を管理する巨大物流企業だ。

創業者の梅志明ミン・メイは1973年、中国・広東省に生まれた。10歳の時、両親に連れられて米国に渡る。父親はインディアナ州の中華料理店でコックとして働き、幼いメイも料理を覚えた。月給は900ドルだった。

父親は自分が働いていた店のオーナーになろうと思い立ったが英語が話せないので、先に英語を覚えた13歳のメイが銀行に行き、融資の交渉をした。後にメイは自分にとって初めての不動産取引となったこの時のことを、こう語っている。

「信用がないので30%のデポジット(保証金)を払ってローンを組んだ。手に入れた店はボロボロだったので、後から保証金を取り戻してリフォームしたよ」

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