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本上まなみさんが今月買った10冊の本

雪山とガラパゴス諸島

『新版 雪に生きる』は1943年刊行の新装復刊版。帯には〈日本スキーの草分けにして、山小屋のセルフビルド、靴下編みの発明まで何にでも知恵と工夫と情熱で挑んだ、猪谷六合雄いがやくにおの生活記録〉とあります。靴下編み? 不思議な文言に惹かれます。

23歳でスキーを始めた著者の初めてのスキー板は〈お風呂の中へ突っ込んだり、石油の空罐で茹でたりして〉自宅にあった板を曲げてこしらえたという自作! 冒頭から雪上を滑る楽しさに目覚め、仲間と出会い、スキージャンプに魅せられ…という青年期が生き生き綴られます。遊牧民のように雪山を求め移住を繰り返す様は、物語のよう。

山小屋作りにも並々ならぬ情熱が。立地、建物構造はもちろん、冷気を防ぐ床、窓の開閉の仕組み(砂袋で上げ下げ!)、机を据え付けた眺めの良い便所など、懇切丁寧に解説。省エネと快適さのバランスが絶妙、二面採光の明るい書斎や背丈に合わせて作った台所、愛らしい子ども室、燃焼効率のよい薪ストーブなどの写真もとても魅力的なのです。

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