
オールドラグビーファンのこれから――堂場瞬一
文・堂場瞬一(作家)
予想をはるかに超える盛り上がりを見せた、ラグビーW杯。日本代表は初のベスト8に進んだが、この原稿を書いている前日に準々決勝で南アフリカに敗れ、「終戦」した。
この敗戦とは直接関係ないが、私は悲観主義者である。どんなに上手くいっている時でも、明日は地獄になるかもしれないと常に考え、心から楽しめない。
こうなってしまった原因の1つがラグビーだ。
高校時代は自分でもプレーしていたが、その後は観る方専門である。自分が観戦してきた時代を振り返ってみると―80年代から90年代にかけて、ラグビーは「国内では」人気スポーツだった。大ヒットしたドラマ「スクール・ウォーズ」の影響もあっただろうが、高校ラグビーは盛り上がり、大学のリーグ戦でスタンドが超満員になるのも珍しくなかった。さらに新日鉄釜石、神戸製鋼の日本選手権7連覇など、覇権をめぐるドラマもあった。
しかし、目を世界に転じると―日本代表はなかなか勝てなかった。W杯は1987年に始まったが、第1回大会は全敗。89年にはW杯ではないがスコットランドを撃破し、勢いに乗って91年の第2回W杯ではジンバブエ戦で初勝利を上げたが、その後がよくない。95年W杯では、ニュージーランドに対して屈辱の145失点。この「ブルームフォンテーンの悲劇」については、思い出しただけでも辛くなるので詳しくは書けません。正直これで、気持ちも離れた。
4年前のW杯でもそうだった。プール戦(予選リーグ)で南アフリカを破る金星を挙げるなど3勝しながら、ボーナスポイントの差で涙を呑んだ時は、「こんなひどい敗退はない」「やっぱり最後はこうなるんだ」と諦めの溜息をついた。そう、喜びの先には必ず悪夢が待っている。
国内のラグビー人気は、その後で一時的に盛り返したものの、長続きしなかった。強化策として、国際大会のスーパーラグビーに、日本代表選手を多数含む「サンウルブズ」として参加したが、惨憺たる成績が続き、2020年シーズンを最後に除外が決まった。
だから今回も、過大な期待は禁物だと自分に言い聞かせた。大会直前の南アフリカとの試合でも大敗していたし……日本ラグビーはまだ発展途上で、先は長い。プール戦で2勝すればよし。個性豊かな各国のラグビーを楽しむことこそW杯の本質―取り敢えずオールドファン的な、通ぶった観戦を心がけて、スタジアムに何度か足を運んだ。
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