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丸の内コンフィデンシャル SMBC日興証券、みずほの爆弾、資源バブルと商社の命運

★スキャンダルの玉手箱

SMBC日興証券の幹部らによる相場操縦事件。東京地検特捜部は、法人としての同社と幹部5人を金融商品取引法違反の疑いで起訴した。さらに佐藤俊弘副社長も逮捕し、事態は風雲急を告げている。

問題となったのは大株主から保有株をいったん引き取って投資家に転売する「ブロックオファー」取引。小糸製作所、モスフードサービス、アズワン、ファイバーゲート、京葉銀行などの株価を不正に安定させる目的で、大量の買い注文を出し、11億円の利益を得ていたとみられる。

逮捕された幹部社員は、外資系証券会社からの移籍組がほとんどだ。自己売買部門を統括する、米国籍のヒル・トレボー・アロン被告(51)はUBS証券在籍中の2014年、ヘッドハンティングでSMBC日興証券に移籍。一昨年、専務執行役員エクイティ本部本部長に就任した。日本語が達者で、北海道庁に勤めた経験もあり、社内でも人気があったという。

エクイティ部の前部長、山田誠被告(44)は、ゴールドマン・サックス証券からの転職組。移籍翌年の2016年、トレーディング業務を担う部長に起用されている。

「野村、大和だけでなく準大手にも後れをとるほど、同社は、自己売買部門が他の大手証券と比べて弱かった。助っ人のヒル、山田の元で、他社に追いつけ、追い越せのプレッシャーがあったのではないか」(日興の元幹部)

同社では、2012年にインサイダー取引に関与したとして、元執行役員らが横浜地検に逮捕・起訴。2018年にもTOBの情報漏洩に絡み、元社員が大阪地検に逮捕されるなど、「スキャンダルの玉手箱」と揶揄されてきた。

近藤雄一郎社長は記者会見で「信頼回復に努めるのが私が果たすべき役割」と述べたが、法人としてのSMBC日興証券も起訴されている。極めて異例の事態であり、企業存続の危機に立たされていることは間違いない。

★みずほの「爆弾」が破裂

みずほフィナンシャルグループ、木原正裕社長の頭痛の種がまた1つ増えた。

ソフトバンクグループや昭和電工とともに「みずほ(銀行)が抱える3爆弾」と揶揄されてきた大口融資先の自動車部品大手、マレリホールディングス(さいたま市)が3月初旬、事業再生実務家協会に事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)を申請し、経営破綻した。

有利子負債残高は1.17兆円とみられており、取引金融機関は今後、巨額の債権放棄やDES(債務の株式化)を迫られる。

同社の前身は日産自動車系列で最大の部品メーカーだったカルソニックカンセイ。主力製品は自動車内装品や空調システムだった。しかしカルロス・ゴーン日産元会長が主導した事業再編によって、2017年に投資ファンドの米KKRに身売り。2019年に同じくKKRに買収されたステランティス(旧フィアット・クライスラー)傘下の部品メーカー、マニエッティ・マレリと経営統合し、「マレリ」の商号で構造改革などに取り組んできた。

ただゴーンの逮捕・逃亡による日産の経営混乱や業績悪化で、いまなお取引の約6割を占める日産グループ向けの売上が激減。2019年3月期以降、4期連続の最終赤字に陥っていたところに新型コロナ禍や半導体不足などが直撃。利払い負担などで資金繰りも逼迫し、進退窮まった。

事業再生ADRは対象会社の金融負債を軽減して経営再建につなげる仕組み。原則的には全取引金融機関の合意が前提となる。

マレリの取引金融機関は約3600億円の融資を抱えるみずほを主力行に、1700億円の準主力・三井住友銀行や政府系金融機関、地銀、国内生保など26社。中国建設銀行やシンガポールのDBSなどアジアを中心に外資系も名を連ねる。

3月7日の第1回債権者会議ではひとまずADRの手続きを進めていくことで合意したが、みずほは少なくとも1800億円の損失負担を覚悟しなければならなくなった。

加えて不気味なのが外資系の反応だ。みずほに「マレリ向け債権の買い取りを求める動きもある」(大手行幹部)という。マレリから引き受けた350億円の優先株も最早、紙くず同然となっており、損失はどこまで膨らむかわからない。

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★ロシア投資の背後に

飯田グループホールディングス(兼井雅史社長)が揺れている。土地を仕込んで住宅を建てる「パワービルダー」の最大手の同社は、郊外の戸建て人気で好業績が続き、今や売上高は1.4兆円に上る。ところがここにきて内憂外患に襲われているのだ。

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