100中川翔子

なくならないいじめ 何度でも言う「死ぬんじゃねーぞ!!」

文・中川翔子(タレント・歌手)

 いじめについての本を私が書くとは思ってもいなかった。当時の自分を思い返すと、いじめや不登校のことを大人からどうこう言われることが一番嫌だったし、なにより自分が人の役に立つとは思えなかったからだ。

 その私に問題意識が芽生えたのは2017年のある番組がきっかけだった。NHKの「#8月31日の夜に。」

 自殺する子が多くなる夏休みの終わりの8月31日の夜に、死にたい子からのメッセージをひたすら受け付ける生放送だ。

 はじめは怖かった。果たして、彼らの闇を受けとめることができるのか、自分が10年以上もの間、封じ込めていたトラウマを掘り起こすことにはならないか。だが結果、やってよかったと心から思った。来るメッセージには共感しかなかった。

 いじめている側に罪悪感はなく、また周りの大人たちには保身しかない。なんで同じことが繰り返されなきゃならないんだろう。どうしたら、いじめを少しでも減らすことができるんだろう――。それがきっかけで少しでも若い子たちに寄り添いたいと思うようになった。

 私は中学生の時いじめを受けて、先生に絶望し不登校になった。その間、何度も死を考えた。

 ギリギリのところで何とか生きていけたのはインターネットがあったからだ。ネットを通じて同じ好きなもので語れる人たちと出会い、自分だけが特殊なんじゃないと思えた。

 その後ひょんなことから芸能界にデビューし、ブログを始めたのは2004年、今から15年前のことだった。

 芸能界デビューと言っても鳴かず飛ばずで、やはり自分はだめなんだと自信を失っていた。ブログは半ばやけくそで始めた。私が死んだときに、せめてこの世界の片隅に自分の足跡を残しておこう、そんな明るい遺書のつもりだった。

 他人には恥ずかしくてこれまで言えなかったこと、漫画やアニメ、ゲーム、猫、メイクなど学校では絶対に見せることのなかった私の好きな世界を思いっきり放出した。一度書き始めたら止まらなくなった。口で言うより速く文字を打ち込み、夜中だろうが、ガンガン更新した。

 すると意外なことに様々な人たちから共感の声が届いたのだ。そのとき「ああ、わたしは生きてここにいてもいいんだ」と心の氷が解け始め、ようやく自分の居場所を見つけた気がした。

SNSによって複雑化するいじめ

 私が過去のトラウマから立ち直った経験を、いまいじめに悩んでいる子たちに伝えたい。

 今回改めていじめと向き合うにあたって、私にはどうしても知っておきたいことがあった。私の経験は今から20年近く前。スマホもSNSもなかった。いじめや学校の仕組みも変わっているかもしれない。だからリアルな声を直に聞きたかった。

 つい数年前まで実際にいじめにあっていた10代の女性2人にお会いして話を伺った。それで知ったのはやはりSNSによっていじめがさらに複雑化して、見えにくくなっていることだ。それがいじめに対処しづらくなっている要因である。

 一方でいじめの本質は変わっていないとも感じた。問題はそれを救うべき大人の存在である。大人に相談するのはいじめられている子にとっては本当に勇気がいることだ。大人は果たしてその声に真剣に耳を傾けているだろうか。

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