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【40-経済】【経済の新しい潮流】最近よく目にする「SDGs」はこれまでの国際規約と何が違うか|蟹江憲史

文・蟹江憲史(慶應義塾大学大学院教授)

ルールがなくて目標がある

2030年の世界のかたちを描いたもの、それがSDGs(Sustainable Devel­opment Goals/持続可能な開発目標)である。現代社会のあり方に関しては考え方や意見の違いがあっても、地球と人類の将来あるべき姿については、国連の193の全加盟国が一致することができた。あるべき姿は、17個の目標と、目標の下で具体的な数値や達成年を含む169個のターゲットという形で示されている。これほどまでに具体的な形で世界の目標が示されたのは初めてのことである。

SDGsは2015年の国連サミットで合意された。2000年の「ミレニアム宣言」を基にして作られ、2015年を達成期限とする「ミレニアム開発目標(MDGs)」を継承するものではあるものの、内容は大きく異なる。MDGsは主として発展途上国に焦点を当てた8目標から構成され、経済的・社会的に貧しい国や人を救うことが主眼であった。その結果、実態として先進国の人々にはそれほど認知されなかった。

これに対してSDGsは、経済・社会・環境という現代社会において軸となる側面が包括的に含まれており、すべての国が目指す目標として設定されている。例えば目標1の「貧困をなくそう」の中には、1日1.25ドル未満で生活する「絶対的貧困」をなくすことだけでなく、「各国で定義される」貧困の半減もターゲットに据える。こうなると、例えば日本で問題となっている「相対的貧困」や「子どもの貧困」といった、格差社会に起因する課題も視野に入ってくる。

さらには、気候変動に起因する災害や、地震やパンデミックのような経済・社会的ショックが貧困に与える影響も対象としている。これらに強い社会を作ることが貧困対策につながるというのである。つまり、カネ・ヒト・地球の課題が相互に関連している現代社会の様相をとらえ、それに対して総合的な対策をとることを「目標」として示しているのが、SDGsなのだ。

こうなると、目標は単なる「目指すところ」としての機能のほかに、仕組みや制度など、あらゆる側面に影響を及ぼすことになる。目標設定をスタート地点とした新たなガバナンスの仕組み、「目標ベースのガバナンス」の始まりである。

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