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渡辺和子 皇道派の親玉は赦さない 保阪正康 100周年記念企画「100年の100人」

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ノートルダム清心学園理事長だった渡辺和子(1927~2016)の言葉は平成の終わる頃、人々の胸を打った。亡くなる直前、保阪正康氏はインタビューの機会があった。/文・保阪正康(ノンフィクション作家)

保阪正康

保阪氏

私が当時88歳だった渡辺さんに会ったのは2016年1月初め。著作『置かれた場所で咲きなさい』がベストセラーになっていた。

私は、渡辺さんに2つの視点で関心を持っていた。ひとつは、父親の渡辺錠太郎(陸軍の教育総監)が二・二六事件(1936年)で青年将校らの襲撃を受けて殺害された時、彼女がそれを目撃したことである。当時、9歳だった。

その時の目撃体験は強い衝撃だったはずだが、戦後は、修道女となり、大学教授として次代の子女の教育にあたる中で、人生のテーマは「赦す」ということが柱になっていたと思う。2つ目はその「赦す」とはどういうことなのかという点だった。

理事長室で、私は実に4時間も話を聞いた。渡辺さんは、すでに癌を患うなど決して体調が万全ではなかった。それでも私たちのどんな質問にも答えてくれた。ご自身なりに人生を振り返っておきたいとの思いがあったのだろう。

渡辺さんは、父親を殺害した青年将校や兵士は「赦す」という心境に達していた。これまで彼女の話はそこで止まっていた。私は一歩踏み込んで、彼らの背後にいた軍事指導者について質した。彼女の答えは鋭かった。

「私には二・二六事件の背景にいた人は『赦す』の対象外です」

渡辺和子

渡辺和子

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