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武田徹の新書時評 問われるメディアの役割

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。

問われるメディアの役割

市職員トップの年収が500万円からいつのまにか6400万円につり上げられていた——。2010年に米カリフォルニア州の地方都市ベルでそんな仰天の事実が発覚した。メディア論の教科書ではその原因が地元紙の休刊にあり、記者に監視されなくなった市職員が勝手放題をしたのだと説明されている。

しかし地元紙が健在だったら本当に不正は防げたのか。共著で『自壊するメディア』(講談社+α新書)を刊行した五百旗頭幸男なら首を傾げるだろう。彼が勤めていた富山のチューリップテレビは市議会議員の政務活動費の不正使用疑惑に挑み、議員14人をドミノ辞任に追い込んだ。だが調査報道の勝利に酔えたのは一瞬だった。再スタートを切った市議会は新人ばかりで活力に乏しく、元の利益誘導型の政治が息を吹き返す流れを前にメディアも市民社会も無力だった。そんな経緯を描いたドキュメンタリー映画『はりぼて』を置き土産に五百旗頭はチューリップテレビを辞めている。

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