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三浦瑠麗が語る野田聖子 「女性総理を目指すなら大義を語るべき」

アメリカ史上初の女性副大統領にカマラ・ハリス氏が就任することになり、日本でも女性政治家に期待が集まっている。女性総裁に最も近いと目される自民党の野田聖子幹事長代行(60)に足りないものを国際政治学者の三浦瑠麗氏が指摘する。

野田氏の“甘い考え”

三浦瑠麗

三浦氏

まず、ハリス氏は大統領候補の座をめぐってジョー・バイデンと争った米民主党内の有力候補だったからこそ抜擢された――という経緯は見逃せません。

日本では、21年に菅義偉政権がどれだけ構造改革で成果を上げられるかが、長期政権を築けるかどうかの分水嶺になります。その政治状況で菅氏と改革姿勢を競い、ナンバー2になる女性は、残念ながら「いない」と申し上げておきます。

とはいえ菅政権が改革を進める要路に「能力のある女性」を配置していることも事実です。2人の女性閣僚のうち、橋本聖子五輪パラリンピック担当大臣は五輪に7度も出場したスポーツ界の「ドン」であり、延期された東京五輪を牽引してほしいという選任理由は頷けます。自民党の中でも女性の地位向上を図る案件で党内をまとめる役割を担ってきた実績もある。

客観的な能力の高さで法務大臣として再入閣されたのは上川陽子氏です。彼女は、今回の新型コロナでも自民党のコロナ対策本部で再流行コンティンジェンシープランのプロジェクトチーム座長を務めた。菅首相がその働きぶりを重視するのは、理由があります。

デジタル改革は平井卓也担当大臣に注目が集まっていますが、実は、申請書類の手続きの押印廃止に取り組むと、その多くが法務省所管の法令にふれ、法相に力量がなければ改革を前に進められない。要の位置に就いた上川氏が、キーパーソンなのです。

上川氏は首相を目指すのではなく能吏タイプ。女性政治家の中に「彼女がいれば物事が動く」と評価されるプロフェッショナルがいる点は、強調しておきたいと思います。

これに対して「初の女性総理大臣になる」と公言してきたのが野田聖子氏です。先に申し上げておくと、野田氏は個人的には同性として頼もしい存在であるし、カラッとした性格で好きな政治家です。

野田聖子

野田聖子氏(衆議院議員)

ただ先の公言について言えば、過去二度の総裁選で意欲を示しながら20人の推薦人が集まらず、今回の総裁選も出馬断念で終わりました。幹事長代行というポストも、野田氏を脅威と見て取り込むというより、人間関係や、とりあえずの座りの良さで配された処遇と見受けます。

では、なぜそんなに野田氏に人が集まらないのか。おそらく、権力闘争に身をおく者として野田氏に“甘い考え”があるからだと見ています。

野田氏は祖父・野田卯一元建設大臣の地盤を継ぎ、自民党的な政治の知恵を継承してもう九期目。郵政大臣、総務大臣、党総務会長など政府や党で相応の場数を踏んできたベテランであることは間違いありません。そのキャリアを通じ「女性は不利だ」と痛感してきたのも確かでしょう。

ただ本来、権力闘争はアンフェアなものです。「女性差別があるから私は総理大臣になれないのだ」と語っても、リーダーの座は手に入らない。

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