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“感染爆発”現地ルポ 沖縄「コロナ炎上地帯」の悲鳴

8月1日に玉城デニー知事が県独自の緊急事態宣言を発出するに至った、未曽有のコロナ禍に見舞われている沖縄県。現地は今どうなっているのか。徹底取材した。/文・鳥集徹(ジャーナリスト)

<この記事のポイント>
●今年8月、沖縄県の人口10万人当たりの新型コロナ陽性者数は「日本最多」の状況が続いた
●県内総生産の4分の1を観光業が占めるため、観光客が来ない状況で多くの人が収入源に苦しんでいる
●8月以降の大規模な感染拡大は、外から持ち込まれたウイルスによる可能性が高い

無料の集団PCR検査

「案内のチラシが入ってたんです。店をよく手伝ってくれている娘もスタッフということで、連れて行きました。だって、自費で受けたら4、5万する検査がタダですよ。そりゃ受けますよ」

新型コロナウイルスの大規模なクラスターが発生した那覇市の歓楽街・松山地区で、音楽バーを営むマスターが打ち明けてくれた。

那覇市と県医師会が松山地区のキャバクラ、バー、居酒屋など飲食店の従業者を対象に、那覇港のクルーズ船乗り場(大型旅客船バース)で無料の集団PCR検査を実施したのは、8月1日(土)と2日(日)のことだった。当初は800人を予定していたが、家族や知人を連れてくる人たちもいて、2日間で2076人が訪れたという。マスターが検査を受けたのは2日目の日曜日。

「車で行ったら駐車スペースに誘導されて、呼ばれるまで20分くらい待ったかな。車から降りて列に並び、順番に検査を受けました。意外とスムーズでしたよ。8センチくらいの棒を鼻の奥にヤバイくらい突っ込まれてね。ウッてなりましたけど。陽性だったら5日後くらいに連絡するって言われていたので、その日が近づくにつれドキドキしましたが、わたしも娘も連絡が来なくてホッとしました」

集団検査を受けた人のうち、陽性だったのは計86人(陽性率約4.1%)だった。キャバクラでクラスターが発生していたこともあって、陽性者は男女とも20代、30代が多かったという。

閑古鳥鳴くキャバクラ街

沖縄は今、未曽有のコロナ禍に見舞われている。

3月末から4月にかけて、沖縄では1日10人前後の小規模な流行があったものの、5月、6月は陽性者ゼロの日が続いていた。

ところが、7月下旬から陽性者が急に増え始めた。8月9日には、これまでで最多の159人の陽性者が発表された。この中には、松山地区の集団検査で見つかった陽性者のうちの71人が含まれている。

直近1週間の人口10万人当たりの陽性者数も、9日には41.87人となり、2番目に多い東京都(17.25人)の2倍を超えるまでとなった。8月20日以降、発表される新規陽性者数は1日20人台から40人台と減ってはいるものの、それでも人口当たりで「日本最多」という厳しい状況が続いている。

玉城デニー知事は8月1日に県独自の緊急事態宣言を発出。本島全域での不要不急の外出自粛を徹底するとともに、夜10時以降の外出を控え、特に繁華街への外出を厳に自粛するよう呼びかけた。

また、松山地区の接待を伴う飲食店に対して、県は8月1日から15日まで休業要請を出し、応じた事業所には20万円の協力金を支払う措置をとった。つまり事実上、松山地区の「ロックダウン(封鎖)」に踏み切ったのだ。

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玉城デニー知事

その松山地区は今、どうなっているのか。筆者が訪れたのは、休業要請が明けて9日後の8月24日。キャバクラが書き入れ時を迎える夜10時頃、台風の影響で時折雨風が吹き荒れるあいにくの天気だったこともあって、通りを歩く客の姿はほとんどなく、キャッチの若い男性ばかりが店の前にたむろしていた。

「ウチの系列の店はまだ、感染者が出てません。入口で熱を測らせてもらいますし、女の子はフェイスシールドつけてます。料金を聞きにいくだけでもいいので、店に寄ってもらえませんか」

そんな感じで、次々に声をかけてくる。

「店が決まっているから、キャバクラには行かないよ」

と言うのに、沖縄なまりの若いキャッチの男の子が、

「どこですか? どうせ暇ですから」

と、わざわざ目的の店が見えるところまで案内してくれた。客が少なく、収入も減っているだろうにと思うと、なんだか気の毒になってくる。

空港から乗った年配のタクシー運転手さんは、

「コロナが怖くて、松山なんて近寄りたくないよ。あそこに行くのは観光客と、うちなんちゅ(沖縄の人)でも若い人だけ。お客さんみたいに一人ならいいけど、観光で来た若いグループを乗せるのは、ほんとうに嫌だね」

と話していた。腹ごしらえに寄った沖縄料理を出す居酒屋も、1時間ほどの間に来た客は筆者の他に2組だけ。その後、冒頭のマスターのバーに寄ったのだが、夜12時過ぎに帰るまでに、筆者以外の客は誰も来なかった。マスターが言う。

「松山でコロナが出てからの売り上げは、以前の1割だね。うちはまだ経済的に余力があるから開けてられるけど、これが年末まで続いたら家賃も払えなくなる。どこも持たないんじゃないかな?」

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手取り4、5万円に収入激減

コロナ感染は、決して沖縄県全体に広がっているわけではない。安心して遊べるところも多いはずだ。

だが、松山以外の地域も苦しんでいる。翌日、沖縄屈指のリゾート地である恩納村にも行ってみたが、ビーチにはほとんど人が見当たらず、観光名所の残波岬にも人影はまばらだった。村役場の隣にある道の駅にも寄ってみたが、酒屋を構える店主はこう話してくれた。

「いつものこの時期に比べると、お客さんは1割か2割です。沖縄が好きで毎年来てくれる常連さんも、今年は来ない。そのかわり、ネットで泡盛を注文してくれるけどね」

その夜に乗ったタクシーの運転手さんによると、「Go Toトラベル」を利用して訪れる観光客はいるものの、部屋が埋まるのは割引額が大きくなる宿泊料金の高いリゾートホテルばかりで、1泊10000円にもならないお手頃なホテルや民宿には予約は入らないという。

「だって、5000円の部屋が2500円になったって、どうしようもないじゃない」

Go Toトラベルは大手には追い風になっているが、経済的に体力のない中小の観光業者にまでは、恩恵が届いていないのだ。そして、その運転手さん自身も、苦境にあえいでいた。

「わたしも、頑張れば18万か20万あった手取りが、今は4、5万だね。県がやっている無利子無担保の支援金を借りたけど、窓口にはいっぱい人が来てたな」

那覇最大の繁華街である国際通りにも行ってみた。ちらほら観光客らしき人が歩いてはいるものの、土産物屋やタピオカ屋の店員が時間を持て余している姿が目立った。国際通りの横道から入る昔ながらのアーケード商店街も、シャッターを閉めたままの店が大半だった。

8月19日には、免税店を運営する沖縄DFS社が希望退職者を募り、約400人の従業員のうち、180人がこれに応じたというニュースも報じられた。

「いま、沖縄には求人はほとんどないよ。これから、最低賃金も下がるんじゃないかな」

嘉手納基地の街・コザのゲート通りで、昭和の時代からの飲食店を引き継ぐ店主が、そう教えてくれた。コザもそうだ。表通りもアーケード街もシャッターを閉めた店ばかり。

「週末になると米兵が飲みに出てたけど、コロナが発生してからは、ほとんど姿を見ないね。米兵相手の店も全部閉まってるよ」

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閑散とする那覇の国際通り

米軍基地でも感染拡大

沖縄では在日米軍基地での感染拡大も深刻な問題となっている。7月28日に沖縄県が公表した数字によると、普天間基地の109人を筆頭に、県全体で239人の陽性者が確認された。嘉手納基地にも7人の陽性者がいた。コザの別の飲食店の店主が話す。

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