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ポスト安倍に急浮上 河野太郎「河野家3代の悲願」

文・篠原文也(政治解説者)

 あれは確か、河野太郎氏が小学6年生の時だったと思う。父親の洋平氏に誘われ、当時所有していた栃木県・那須の那須野牧場を訪ねた。洋平氏の家族も一緒で、長男の太郎氏もいた。夜、敷地内の別荘で次男の二郎君、長女の治子ちゃんも入ってトランプゲームに興じた。その際、太郎氏が私のカードの出し方にクレームを付け、「篠原のおじちゃん、それは……」と言い出した。「おじちゃんじゃないだろう。お兄ちゃんと呼べ」と言い返したのだが、彼の正義感の強さに感心したのを覚えている。

 その「太郎ちゃん」が第2次安倍政権で行革等担当相(国家公安委員長)、外相、防衛相と要職を重ね、ポスト安倍に急浮上している。

 今回の内閣改造で外相ポストは外れたものの、「(外交と)コインの表裏の関係にある」(河野氏)防衛相という重要ポストに横滑りした意味は小さくない。先に向けて足場を固めた形だ。

 河野氏の最大の後見人になっているのが菅義偉官房長官だ。衆院議員当選同期で、選挙区も同じ神奈川ということもあり、2人の関係は親密。菅氏には初当選時から「同期からトップが出るとすればこの男以外にいない」との思いがあったようで、自民党が野党に転落した後の2009年の総裁選に河野氏が出馬した際、その背中を押している。

 2017年の第3次安倍第3次改造内閣の人事で河野氏を外相に推したのも菅氏だ。今度の防衛相起用も、菅氏の安倍晋三首相への働きかけによるところが大きい。そこには茂木敏充、加藤勝信、小泉進次郎氏らポスト安倍のライバルたちが主要閣僚や新閣僚に起用される中、閣外に去り、無役になれば、「ポスト安倍レースから脱落しかねない」との判断があったと聞いている。

 河野氏にはもう1人、後見役がいる。派閥(麻生派)のボスでもある麻生太郎副総理・財務相だ。麻生氏はもともと父親の洋平氏が作ったグループ(「大勇会」)に属し、洋平氏の薫陶を受けてきただけに、その息子の太郎氏を育てようとの“親心”が随所に感じられる。

 河野氏の1番の武器はその「発信力」だろう。ツイッターのフォロワーは115万人(2019年10月中旬現在)を超える。「物事を分かりやすく世の中に伝える」ことをモットーにしているだけのことはある。

 行革相時代に見せた「突破力」、外相時に発揮した「行動力」も売りだ。約2年間の外相在任中に訪れた国・地域は77(延べ123)にのぼり、外相としては過去最高だ。

 率直な物言い、毅然と言い放ち、自説を曲げない言動は誤解を生みやすく、時には物議を醸す。それでも菅氏はその胆力と「約束を守る」態度を高く評価する。菅氏によると、安倍首相もこの点を買っているという。

 英語力の高さも大きなアドバンテージだ。ジョージタウン大留学を通じて身に付けた語学力は外務省内でも「歴代の首相、外相の中でも1、2を争う」(幹部)との声がもっぱらだ。

 難点は根回しと気配りが欠けていることだ。この点は菅氏も認めている。

 防衛省という役所は北朝鮮のミサイル発射や災害などへの緊急対応が求められる“事件官庁”の性格を有し、「目配り気配り」が欠かせない組織だ。防衛相に就任してから外相時代に見せたエキセントリックなトゲトゲしい面がやや薄らぎ、ソフトになっている気もするが、防衛相ポストを通じてこの弱点をどう克服するか、河野氏の今後の課題であろう。

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