藤崎彩織 ねじねじ録|#13 平等なルール
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藤崎彩織 ねじねじ録|#13 平等なルール

デビュー小説『ふたご』が直木賞候補となり、その文筆活動にも注目が集まる「SEKAI NO OWARI」Saoriこと藤崎彩織さん。日常の様々な出来事やバンドメンバーとの交流、そして今の社会に対して思うことなどを綴ります。

Photo by Takuya Nagamine
■藤崎彩織
1986年大阪府生まれ。2010年、突如音楽シーンに現れ、圧倒的なポップセンスとキャッチーな存在感で「セカオワ現象」と呼ばれるほどの認知を得た4人組バンド「SEKAI NO OWARI」ではSaoriとしてピアノ演奏を担当。研ぎ澄まされた感性を最大限に生かした演奏はデビュー以来絶大な支持を得ている。初小説『ふたご』が直木賞の候補になるなど、その文筆活動にも注目が集まっている。他の著書に『読書間奏文』がある。

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平等なルール 

 小学校4年生の頃、家から電車で1時間以上かかる場所へピアノを習いに行っていた。そんなに遠くまで通う事にしたのは、音大が主催する音楽スクールで学びたかったからだ。
 レッスンが終わった後は近くの公衆電話から「今から帰るよ」という報告をしてから帰宅するのが母との取り決めだった。携帯電話がない時代だったので、その電話の時刻から帰宅時間をおおよそ予想し、もしもその時間に帰ってこれない事態が起きた時は、母がすぐに気づけるようにする為だった。
 ある日、私は約束通り「今から帰るよ」と母に電話した後、古本屋さんの前に『地獄先生ぬ〜べ〜』の漫画が特売のカートに入っているのを見つけた。
 店内の本はぴっちりとビニールで閉じられているけれど、特売のぬ〜べ〜は無防備に店先に置かれている。家では、漫画は風邪を引いた時にしか買ってもらえないものだったので、私は思わず手にとって夢中で読み始めた。
 私は学校で友達と上手くやれない自分の状況を思いながら、
「私にも、こんな風にクラスメイトと協力せざるを得ない事件が起こってくれたら」
 と、淡い期待を寄せながら漫画を持つ手に力を込めて先を読み進めた。

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