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「ファーウェイのスマホは安全か」欧米の政府・企業も指摘 ファーウェイのスマホはスパイ工作に使われるか

1つのテーマで対論を読んで思考力を鍛えよう。このコラムのテーマは「ファーウェイのスマホは安全か」です。
★対論を読む

文・山田敏弘(国際ジャーナリスト)

 米政府が中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を筆頭に中国の通信機器企業を米市場から完全に締め出すと発表したのは、2019年5月のこと。

 ファーウェイは、スマートフォンの売り上げでは米アップル社を越えて世界2位に君臨し、これから世界中で導入される5G(第5世代移動通信システム)を始め、インターネットなどの通信のインフラとなる通信基地局のシェアでは世界1位に位置する中国を代表する大手企業だ。ドナルド・トランプ大統領は5月15日、「大統領令13873」に署名し、事実上、米国企業の中国製通信機器の使用を禁じた。続く21日には、米商務省が、ファーウェイと関連企業68社を「エンティティーリスト」、つまりブラックリストに追加したと発表(8月にさらに46社を追加)。これによって、ファーウェイは米政府の許可を得ることなく米企業から部品などを調達することが禁止になった。

 米政府は、同社製のスマートフォンや通信機器が中国政府によるスパイ工作に使われると判断したために、こうした強硬措置に出た。米上院情報委員会の公聴会に出席したFBIのクリストファー・レイ長官は2018年2月、ファーウェイのような企業に通信ネットワークの支配を許してしまえば、「彼らが悪意を持って勝手にシステムを改竄し、誰にも気付かれず情報を盗み出すスパイ行為ができるようになってしまう」と述べている。そして同盟国にも、同じような禁止措置を取るよう求めている。

 こうした米政府の動きに対し、当事者であるファーウェイや中国政府が猛反発。「情報を盗んでいる証拠を見せろ」と米国に詰め寄り、世界各国に同社製品を排除しないよう働きかけた。中国とビジネス関係を切ることができない親米国は、板挟み状態に追い込まれている。

 実際のところ、同社の製品は危険なのか。結論から言うと、安全であるとは言い難い。その見方は、米政府のファーウェイをはじめとする中国の通信機器企業に対する揺るぎない不信感に表れている。

 米国がまず問題視しているのは、2017年に中国で制定された国家情報法の存在だ。同法は、国民や企業に、国家の情報活動を支援する義務があると定めている。つまり、政府から命じられれば、ファーウェイのスマホや、5G向けの通信基地などを通るデータは、求めに応じて政府に提出する義務を負うということになる。ますますデジタル化とネットワーク化が進む現代では、個人の情報のみならず、政府や軍事関係、民間企業の知的財産までがその情報活動の標的になると米政府は強い懸念を示している。

 それだけではない。実は、米政府のファーウェイに対する不信感は、安全保障上もビジネスにおいても非常に根が深い。

 ファーウェイは1987年に広東省深圳(しんせん)で、元人民解放軍の任正非によって設立された。同社は2000年代には米国に、2005年には日本にも進出した。ただ当時から、米国企業から知的財産を盗んでいると指摘され、訴訟沙汰にもなっている。実際に盗んだことを認めて、製品の販売を中止したこともあった。

 そうした経緯から、米政府は任正非CEOが中国政府とつながっている可能性を疑い、2009年頃から米諜報機関のNSA(国家安全保障局)がスパイ工作を開始している。同社の内部文書や電子メールを監視していただけでなく、同社製品の仕様までチェックしていた。

 そこから得た情報などを受けて、2012年に米下院情報委員会が声明を発表。ファーウェイなどの中国企業が安全保障の脅威であると非難した。2014年には、正式に米政府機関などでファーウェイが入札に参加できないような措置を取り、さらに2018年8月には、米国防権限法によって米政府や関係機関でファーウェイなどの機器の使用を全面的に禁じている。そして冒頭の、「完全締め出し」につながっていくのだった。

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