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シリコンバレーはビジネスを超えて政治的怪物となるか

文・池田純一(FERMAT Inc. 代表)

 シリコンバレーを支えるイデオロギーは今、大きな転換点にある。

 2016年11月8日のトランプ大統領の誕生以来、シリコンバレーは混沌とした時代を迎えた。それまであった21世紀のアメリカの先導役としてのテック企業というイメージは大きく損なわれた。後の調査で、2016年大統領選におけるフェイクニュースの流布や個人情報の流出などの事実が発覚し、グーグルやフェイスブックなどのシリコンバレーの大手企業(ビッグ・テック)はアメリカン・デモクラシーを毀損する存在とみなされるまでになった。マーク・ザッカーバーグをはじめとするビッグ・テックの創業者や経営陣が、連邦議会の公聴会に呼び出される姿はすっかり普通になった。

 シリコンバレーにとって不幸だったのは、大統領選というアメリカ最大の政治イベントにおける失態であったため、90年代以来、蜜月にあった民主党との関係にも亀裂が入ったことだ。2018年にEUでGDPR(一般データ保護規制)が導入されたことも後押しし、プライバシー保護や反トラスト法的観点からの企業分割など、政府による法的介入、すなわち規制を検討すべきという声は今では党派を超えるものとなった。

 いつの間にかビッグ・テックこそが問題の時代となってしまった。中にはこうした時代認識をさらに進め、トランプが開いた新時代の共和党にふさわしい政治信条を創り出そうとする動きも現れた。39歳の共和党上院議員のジョシュ・ホーリーらが掲げる「ナショナル・コンサバティズム」がそれであり、そこではトランプ以前の保守主義が批判したビッグ・ガバメント(大きな政府)ではなくビッグ・テックこそが社会不安の元凶とされる。

 レーガン大統領が指弾した「大きな政府」とは、端的に1929年の世界大恐慌がもたらした社会的大混乱に対してルーズベルト大統領が導入した「リベラルな民主党による政府」のことだった。その逆張りとして「小さな政府」を目指す、すなわち連邦政府の権限を縮小し、代わりに州政府の権限を拡大しようとした。レーガンの保守主義とは反民主党=反リベラリズムのことだったのだ。この路線は70年代以降、低成長経済の下での「生活保守」の時代基調にも合い、徐々に社会に浸透し、今日の保守が優勢なアメリカ社会を生み出した。

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