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【100-教育・科学】好奇心に基づいた独学がコロナ時代の未来を拓く|柳川範之

文藝春秋digital
文・柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)

独学の可能性が広がる

コロナ禍の中では、様々な変化が起きたが、インパクトが大きかったのはオンラインの利用拡大だろう。多くの人が曲がりなりにも、オンラインでの仕事や授業を経験したという事実は、今後の学びのあり方にかなり大きな影響をもつだろう。

オンラインの大きなメリットは、職場や学校に行かなくても、活動ができることだ。この点は、社会人が、独学で勉強しようとする際には、とても有利な変化だ。仕事をしていれば、どうしても学びに使える時間は限られてくるから、たとえば学校までの移動時間がかからないというのは、かなりのメリットだ。

それに加えて、オンラインであれば、細切れに時間が使えるという点も見逃せない。子育てをしていたら、まとまった時間を学びにあてることが難しかったりするが、オンラインであれば、空いた細切れの時間を使って、少しずつ配信ビデオを見て勉強するといったことが容易にできる。

つまり、このコロナを契機として実現したオンライン環境の進化は、実は、独学で何かを習得したいと考える人々にとって、大きく可能性を広げるものだ。また、その変化に合わせて、学習コンテンツの供給側も、より充実してきている。

たとえば、緊急事態宣言下においては、多くの人が在宅で時間ができたこともあり、オンラインのセミナー等を視聴しようとした人は少なくなかった。その結果として、かなり充実した教育コンテンツが、オンラインで提供されるようになってきており、この傾向は今後も続いていくことだろう。

もちろん、大学に通う等リアルな学習には当然、大きな意義はある。しかし、限られた時間の中で何かを学びたいと考える社会人にとって、ある意味でコロナによって拓かれたともいえる、この新しいチャンスを活かさない手はない。

ただし、目の前に教師がいるわけでもなく、強制される側面がかなり少ないオンラインを活用した独学は、今までと異なった心構えや方法論が必要になってくるのも事実だろう。

その点で、まず必要なことは、自分の関心や好奇心をできるだけ重視することだ。どんな人でも関心のないことは長続きしないし、やる気も起きない。独学の場合、やる気が起きないと結果として学びも進まないことになる。だから、できるだけ自分が関心の持てる分野の勉強をすることが一層大切になる。

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