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新大河『青天を衝け』主演・吉沢亮 母の応募したオーディションから大河初主演を摑むまで

2021年NHK大河ドラマ『青天を衝け』(2月14日放送開始)で主人公の渋沢栄一役に抜擢されたのは、1994年生まれの俳優、吉沢亮。27歳にして、大河ドラマ初出演ながら主演という大役を務める。

2009年、オーディションで見出され15歳で芸能界入り。2020年には、映画『キングダム』(2019)で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。NHK連続テレビ小説『なつぞら』では広瀬すず演じるヒロインの初恋の人・山田天陽役を務めた。

約500の企業を育成しながら600もの社会公共事業に関わり、「日本資本主義の父」とまで呼ばれた渋沢栄一。1840年に生まれ、幕末から明治、大正、昭和へと世の動乱の渦を生きた91年の生涯は、彼の漢詩からとられた本作のタイトルにも見ることができる。

「勢衝青天攘臂躋 気穿白雲唾手征」(青空をつきさす勢いで肘をまくって登り、白雲をつきぬける気力で手に唾して進む)

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吉沢さん

「大河の主演決まりました」

一昨年の夏のある日、家で一人でバラエティを観ながらお酒を飲んでいたら、突然マネージャーさんから電話がかかってきたんです。

「誰にも言えない話があるので家にお邪魔してもいいですか?」

こわっ、と思って。何かやらかしたかな、と。慌ててテレビを消して、「なんだ突然?」とドキドキしながら待っていました。

家に着くなりマネージャーさんが鞄から資料を取り出して、「大河の主演決まりました」って。ビビりました。喜びが爆発、という前に、とにかく自分で務まるのか、作品が成立するのかという不安が襲ってきたのを覚えています。

もちろん、役者であるからにはいつか大河ドラマに出たいという思いはありました。でもそれはあくまで遠くの目標くらいの漠然としたもので、まさかこの歳で主演をやらせていただけるとは想像すらしていませんでした。

渋沢栄一を演じると聞いても、正直僕の中には「次の1万円札の人だ」というイメージしかなくて。とにかく本を読んだりして、どういう人生を送った人だったのか調べるところから始めました。

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瑞々しさと高い演技力が見込まれた

一人の生涯を演じきる

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渋沢栄一

実際に撮影が進んでいくなかで、時代ものはやはり役作りが難しいなと思います。なによりも登場人物の持つ価値観が、自分も含めた今の人たちとは全然ちがうので。

たとえば、死というものへの考え方。昔は自ら腹を切ることが美徳とされていたじゃないですか。これまでの大河ドラマも、どちらかというと、死ぬ瞬間の儚さだったり、そこに至るエネルギーのようなものをかっこよく描いているものが多いと思うんです。でも栄一はちがう。彼は切腹が勇ましく、男気あるものだという見方をされる時代のなかで、泥臭くてもダサくてもとにかく生き抜く道を選んだ人間なんです。

彼は、武蔵国で藍玉作りと養蚕を営む百姓の家に生まれました。父の仕事を手伝い商いを学ぶ傍ら、読み書きや論語も勉強し、道徳を心得るようになる。一方で武術にも励み、身分制度によって腐る幕府を倒す計画を立てるものの、京都の状況を知り断念。一転、幕臣となって生きることを決意するところから波乱は始まります。

栄一の人生はジェットコースターのよう。時代ゆえの転機がいくつもあるんですけど、その瞬間瞬間に自分で決断をくだすことができるんです。

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