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【連載】EXILEになれなくて #19|小林直己

第三幕 「三代目 J SOUL BROTHERS」という運命


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六場 J SOUL BROTHERSの歴史〈2008 - 2021〉

 二代目としての活動が始まった、2007年はそのままCOLORのツアーに帯同し続けた。あっという間に一年が終わり、2008年になると、1st Single「WE!」のレコーディングのために、アメリカ・アトランタ在住のプロデューサーGIANT SWINGのプライベートスタジオに向かった。現地で、合宿しながらの制作となった。初代の楽曲を制作したプロデューサーとの1st Singleの制作は、とても思い入れが深いものとなった。地下のレコーディングスタジオで1パート録音するごとに、その音源を持ち出し、アメリカ式の広く張り出した玄関ポーチで振り付けを作った。途中、パトカーが何台も集まってしまう騒ぎにもなったけれど、無事に完成し、帰国した。

 その後、楽曲の制作を続けながら、マイクロバス1台で全国をライブパフォーマンスして回る「武者修行」を経験し、EXILEのドームツアー 「EXILE LIVE TOUR “EXILE PERFECT LIVE 2008”」 への出演が決まる。サポートダンサーとしての出演だけでなく、二代目として、「24Karats」でEXILEとの正式なコラボレーションで、アーティストとしてドームのステージに立たせてもらうことができた。

 最終日は、カウントダウンライブだった。

 汗だくでステージを降り、スタッフにお礼を述べながら、楽屋に向かおうとすると、スタッフに声をかけられた。「HIROさんから話があるから、ついてきてもらっていいかな」。一体何を話されるのか、見当もつかなかった僕は、何かしでかしてしまったのではないかという一抹の不安に襲われた。

 本番を終えた巨大なセットの裏を通り抜け、建物のある一室に入っていく。するとそこには、HIROと、ハンディカメラを持った数人の方々が待ち受けていた。何が行われるのだろう。

「お疲れ様でした!」。HIROから、まずはライブへの労いの言葉をかけられた。「このライブは、二代目のみんなにとっても、大きな経験になったと思う」。たしかに、武者修行という、全国各地でのライブパフォーマンスに続けて、こうして、5万人もの人が集まるドームでのパフォーマンスを積ませてもらえたことは、確実にこれからのアーティスト人生にとって大切な経験となった。そして、HIROは言葉を続けていく。「自分が思っているエンタテインメント像やEXILE像は残していきたい」「出会い方はそれぞれバラバラだったけど」「永遠というものは無いじゃない?」「自分たちがいなくなっても、そこに込めた思いや信念が残っていくような」……。そのあとの衝撃が大きすぎて、記憶が曖昧なのだけれど、まっすぐに僕たちを見て話すHIROの瞳は、今でもはっきり覚えている。そして、HIROはこう告げた。「二代目とともに、14人のEXILEとして活動していきたいと思っている」。2009年の始まりと共に、新たな人生が幕を開けた。

 2007年に活動を始め、2009年にEXILEにメンバー全員が加入する形で、活動を終えた二代目J Soul Brothers。インディーズシングルを4枚、メジャーアルバムを1枚リリースし、約2年の活動の中で、J Soul Brothersの名前を引き継いだ。

 そして、この1年後、HIROの口から新たに出た言葉が、「三代目 J SOUL BROTHERSを結成したいと思っている。そして、リーダーには、NAOTO、そして、直己を考えている」。

 三代目の活動では、二代目で得た経験の数々が、本当に役に立った。二代目では、アルバムでのメジャーデビューの4日後にEXILEに加入し、「売れていくために」という過程を経験せずにビッググループの一員となったが、三代目ではEXILEのノウハウは受け継ぎつつも、しっかりと三代目としてのデビューからの経験をさせてもらった。三代目のデビューから4年が経った2014年に、初めてのドームでのライブツアーを迎え、会場で最後のリハーサルをする直前、客席でHIROとステージを眺める機会があった。その時のHIROの言葉が、今でも印象に残っている。

「J Soul Brothersという名前は、自分にとってやっぱり青春だし、ずっと思い入れがあった。そのチーム名が、こうして何十年も経って今、このドームの会場に掲げられていることは、とても感慨深い」。その言葉を聞いた時に、このグループの名前を継承できたのではないかと感じた。また、受けてきた恩を少しでも返せたのかもしれないとも。J Soul Brothersは、僕にとっても青春だった。

 初代の結成から、20年。その大元となったダンスグループ、 JSBから考えると、今年で30年が経過する。そこには、多くの人の思いとプライドが混じり合った、JSB HISTORYが存在している。LDHには、EXILE、そしてEXILE TRIBEという大きな輪が存在するが、それと同じく、いや、それ以上に広がるJ SOULの輪というものが存在している。ELLYが、10周年ライブとなったLIVExONLINE「JSB HISTORY」を終えて言う。「J SOULは、常に時代の先端を走ってきた。世界のトレンドを取り入れ、日本発の新たな音楽とパフォーマンスを生み出してきた」と。

 EXILEの原点であり、その熱き思いの源であるJ SOUL BROTHERSは、三世代目まで継承された。そのグループは、ミリオンヒット、ドームツアーなど、多くの夢を叶え、10周年を迎えることができた。その物語はこれからも続いていく。永遠というものはないかもしれないけれど、J SOUL BROTHERSは、その本人がいなくなっても、そこに込めた思いや信念に触れた人間が、またその炎を燃やし、輝かせていく。その長い歴史の一端を担えたことを、僕は誇りに思った。

# 20 につづく

■小林直己
千葉県出身。幼少の頃より音楽に触れ、17歳からダンスをはじめる。
現在では、EXILE、三代目 J SOUL BROTHERSの2つのグループを兼任しながら、表現の幅を広げ、Netflixオリジナル映画『アースクエイクバード』に出演するなど、役者としても活動している。

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