三人の卓子_改_

三人の卓子<読者と筆者と編集者>【全文公開】


横浜とカジノ

 11月号の『菅官房長官、カジノは筋悪だよ』では、ノンフィクション作家の森功氏が、「ハマのドン」と言われる藤木幸夫氏にインタビューしていた。記事を読み、憂国の念を強くした。

 8月22日に林文子横浜市長が、それまでの方針を反転させて、横浜市へのカジノ誘致を表明した。

 地元の実業家である藤木氏は、以前はカジノ誘致については賛成の立場をとっていたようだが、巷で伝えられるギャンブル依存症の恐ろしさを知り、考え方を180度変えたのだという。

 記事を読み進めるにつれ、今回のカジノ誘致表明には米国の意向も大きく関わっているということが分かった。

 私は藤木氏の意見を非常に納得して受け入れることが出来た。藤木氏は、横浜市の現状を日本のただの一都市のものではなく、日本そのものの問題のように捉え、憂慮されていると感じたからだ。

 横浜という都市を入口にして、アメリカから流入するカジノは、日本人の美しい精神を崩壊させてしまうのではないだろうか。

「カジノは筋悪」と喝破された藤木氏に敬意を表し、横浜の市政や市民がこれにどう応えるか、見守りたい。(秋田県 藤原早苗 83歳 無職)

シャンデリアの思い出

 11月号掲載の、柴崎友香さんによるエッセイ『時間を受け継ぐ』を読みました。

 昨年4月、大阪市営地下鉄は大阪メトロになり、それに伴って地下鉄駅の改修案が発表されました。

 その案は、これまでのシンプルで堂々としたデザインとはかけ離れたもので、その方針に疑問を感じた柴崎さんは署名運動を立ち上げられたそうです。その結果、シャンデリアなどが受け継がれることになりました。

 あの蛍光灯シャンデリアをデザインした会社に私の父は勤めており、駅の事業に携わっておりました。心斎橋駅にシャンデリアが点った時に、ポスターが作られたのを覚えています。シャンデリアの下で、佐田啓二さんと岸惠子さんが写っていました。そのポスターが、我が家の居間に貼ってありました。

 亡き父に伝えたいです。「遺してくださってよかったね」と。私も父の思い出が遺るのは嬉しいです。

 輝き続けるシャンデリアにエールを送ります。大阪育ちの友香さん、ありがとうございました。(兵庫県 藤本久子 80歳 主婦)

天皇陛下との登山

 11月号に掲載された『新天皇・雅子皇后「65人の証言」』では、これまで天皇陛下、雅子様に接してこられた人々の、心温まるエピソードを読むことが出来た。

 私自身も、大切な思い出があるので紹介したい。

 1988年夏鹿児島で開催された国際火山会議に臨席された当時の皇太子殿下は開聞岳に登山された。

 当時は、妃殿下候補の話題で持ち切りで、大勢の報道陣が同行していた。

 殿下は一般の登山者に迷惑がかからないよう配慮されて、早朝に朝食抜きで、宿所のグリンピア指宿を出発された。

 私は当時、県の担当者の1人として、殿下のお弁当を携えて同行したのだった。

 天候のことやトイレのことなどいろいろと懸念されることはあったのだが、アルピニストの殿下には標高924メートルの開聞岳登山は、まさに朝飯前の散歩のようなものであったようだ。

 山頂はあいにく雲に覆われ、眺望が利かなかったのは残念であったが、百名山の1つを征服されたことで殿下はご満悦のご様子であった。

 山麓には多勢の人々が、下山してこられる殿下を待ち受けていたが、殿下はこれらの人々を掻き分けるようにして先ずはトイレに駆け込まれたのであった。

 その後、満面の笑みを湛えられて大勢のギャラリーとともに記念写真に納まっていただいた。人々は必死に笑いを堪え、殿下の一連の堂々たる振る舞いに大いに感じ入ったのであった。

 令和が素晴らしい時代になることを祈りたい。(鹿児島県 迫一徳 78歳 無職)

解決の糸口を

 我が家は全員韓国料理が好きだ。以前に韓国に家族旅行をした時には、物価が安くて買い物もしやすく、海外旅行の初心者にうってつけだった。

 だから、韓国には全く嫌悪感など抱いたことがなく、むしろ親近感を覚えていた。

 11月号の大特集『日韓相克』を読むと、日韓両国が現在抱えている問題について網羅的に知ることができた。

 昨今の慰安婦問題や徴用工問題により日韓関係は悪化の一途を辿るばかりで、問題解決の糸口は全く見えない。

 相手の国に対する嫌悪感は増大していくばかりで経済、貿易に多大なる悪影響が及んでいる。さらに、その影響は民間の交流レベルにまで拡大しているという。大変憂慮すべき事態で、危機感は強まる一方だ。

 橋下徹氏も、『徹底討論 対立か協調か』の中で、徴用工問題での日本政府の対韓輸出規制についてこう語る。

「最初は韓国国内で差し押さえられた日本企業の資産売却を牽制するために始めたことなのに、差し押さえられた資産の価値以上の経済的損害が拡大してしまっている。これでは本末転倒です」

 いろいろ問題はあるにせよ、北朝鮮や香港の問題などで不安定な東アジア情勢を鑑みると、早期の関係改善を望まずにはいられない。この特集で授けられた知恵を、活かしていきたい。(北海道 矢田智幸 56歳 地方公務員)

消費税に疑問

 11月号に掲載された『日本は消費税ゼロでもやれる』を読みました。

 日本の税制では大企業や富裕層が優遇され、儲かっている大企業でも、社員に還元すべき給与を十分に支払っていない現状があります。

 記事では約446兆円も企業に内部留保がなされていることが分かり、驚きでした。

 10月から消費税が10%に引き上げられ、高齢者の1人としては、政府のポイント還元策がキャッシュレス決済を前提としていることも、いまだに納得がいきません。多くの高齢者は現金払いが主で、スマホ決済などをする人はわずかだと思います。

 食料品が8%なのはせめてもの救いですが、小売りや外食店では持ち帰りで税率が異なり、レジでは混乱が見られます。

 なぜ、年度途中の引き上げなのか。医療、介護など社会保障費が激増する中で財源確保の強化は重要です。

 ですが著者の富岡幸雄氏が述べているように、大企業や富裕層への課税を強化することで消費税を下げ、消費意欲の低下を防ぐことも必要ではないかと考えました。(長野県 吉沢順子 73歳 無職)

悲痛な叫び

 11月号に掲載された広野真嗣氏による目黒虐待死事件についての記事『結愛ちゃん母「懺悔の肉声」』を読んだ。その後、10月15日に父親の船戸雄大被告に対し、懲役13年の判決が下った。

 記事を読み進めるほどに、子を持つ親として、父親の人間の限界を超えた行為に驚愕した。

 一方、母親の船戸優里被告は、公判で声を震わせていた。

「結愛を異常なほど愛していました。結愛の心も体もボロボロにして死なせてしまったことへの罰はしっかり受けたい」

 広野氏はこれに対し、

「(夫への)恐怖で頭の中を塗り込められた母親は動くことができず、同じ屋根の下で娘は衰えていった。孤立した母の選択を、普通の親の意思決定に照らして断罪できるのだろうか」

 と訴えてくる。

 これまでの調査によって、DVと児童虐待には強い関連性が指摘されているのだという。今回、優里被告は、夫の雄大から心理的DVを受けていた。

 優里被告が虐待を放置していたという責任も重いが、夫の暴力への恐れによって心身ともに身動きがとれなくなっていったのだろう。

 弁護側の証人に立った精神科医・臨床心理士の白川美也子氏は、彼女とアクリル板越しに面会を重ね、徐々に心を開かせていったという。その面会記録からは悲痛な叫びが見てとれた。

〈もうおねがい ゆるして ゆるしてください〉

 あの結愛ちゃんの文字が、頭を離れない。(山梨県 石井宏紀 79歳 無職)

【訂正】

 小誌11月号168頁の記述で、藤木幸夫氏が最後に菅義偉官房長官に会ったのは、「2015年7月1日」ではなく「2017年6月22日」でした。訂正します。

【お詫び】

 小誌10月号当欄に永末晴成氏の寄稿を掲載する際、編集上の不手際があり、本来の文意を損ねてしまいました。永末氏にお詫び申し上げます。

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