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詩 岩倉文也「終わらない散歩道」

終わらない散歩道

遠く仄暗い山あい 鳴き交わすひぐらしの声をきいたとき
ぼくの運命は決まった
まだ夢の廃屋はふくらんでいる
だが足首をくすぐる草叢のなかに
ぼくを呼ぶ野良猫はもう
いない─ただ、きみに合わせる顔をひとつくらい
持っていたかっただけなのに。赤い空にまなざしは溶けゆく
ぼくがここにいること
それは誤謬ではない
失われるすべてのために ぼくは今日も夕ぐれを見ていた


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