角幡唯介さんの「今月の必読書」…『ハテラス船長の航海と冒険』ジュール・ヴェルヌ著 荒原邦博訳
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角幡唯介さんの「今月の必読書」…『ハテラス船長の航海と冒険』ジュール・ヴェルヌ著 荒原邦博訳

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北極点を目指した英雄の夢と実像

『海底二万里』などで有名なジュール・ヴェルヌによる極地探検小説の初の完訳本である。ロマンあり、サバイバルあり、部下の反乱ありで、19世紀の極地探検の世界像をまるごとつめこんだ贅沢すぎる作品となっている。

作品は2部構成だ。第1部は実際の歴史をふまえた、とても実証的な筋の話である。19世紀の北極探検の主役は英国海軍の探検家たちだ。1840年代に彼らはフランクリン隊の大遭難をひきおこすが、その行方を探すために派遣された多くの隊により地理的解明が一気にすすむ。

物語の主人公ハテラス船長は、軍属ではないが、この系譜をひきつぐ英国人探検家であり、実際の歴史を紐解くように、過去の隊の足跡をたどって航海をすすめてゆく。

そして第2部からは、その先の、実際に未知だったエリアの探検に話がうつる。ヴェルヌはこの地域に、現実には存在しない陸地や不凍海を登場させ、ハテラス1行に空想の世界を旅させている。物語は完全にフィクションとなり、想定外のしかけで読み手をワクワクさせる。

こうした事実と虚構をたくみにおりまぜた構成により、ヴェルヌが訴えたかったことは何なのだろう。

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