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鹿島茂 菊池寛帝国が崩壊? 菊池寛 アンド・カンパニー16

衆目を集めた今東光との「全面戦争」/鹿島茂(フランス文学者)

★前回を読む。

 関東大震災から帝都東京が復興するスピードと合わせるように、菊池寛と「文藝春秋」は急速に立ち直った。大正13年4月号では発行部数2万部に達し、同年1月から4カ月分の利益総計1589円のうち700円を原稿料未払いの寄稿家に分配するという余裕まで生じた。

 騎虎の勢いに乗った菊池寛は7月特別附録号の巻頭で「文藝講座」という新企画をぶち上げる。これは1カ月1円20銭なりの会費を納入すれば毎月2回講義録が配布され、6カ月で講義終了という形式の通信講座だった。大日本雄弁会講談社の講義録出版の焼き直しともいえたが、「講座」というアカデミックなネーミングにしたところが復興景気に沸く新中間層の勉強熱と見事同調したのである。

 では「文藝講座」の内容はいかなるものだったのか? 課目はレベルの高いカルチャー・スクールといった趣きで、これを芥川龍之介、菊池寛、久米正雄、山本有三、徳田秋声の責任講師ほか各分野の専任講師が担当することになっていた。ちなみにフランス文学講座の担当講師は辰野隆と豊島与志雄。

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