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ヴォヤージュ・デュ・ショコラ|真野重雄

文・真野重雄(三越伊勢丹バイヤー)

1月27日から2月2日まで、新宿NSビルで催された「サロン・デュ・ショコラ2020東京」が、盛況のうちに幕を下ろしました。22カ国、126のブランドが集まり、数万人ものお客様にお愉しみいただきました。

サロン・デュ・ショコラは、パリで生まれたイベントです。伊勢丹(現:株式会社三越伊勢丹)の主催で行うようになったのは17年前。混雑緩和のために2018年から入場料をいただき、時間予約制を導入しました。海外から来る有名なショコラティエに一目会いたいというお客様も多く、中にはカタログにサインをもらう方もいらっしゃいます。

私がサロン・デュ・ショコラの担当バイヤーになったのは2017年のこと。実はそれまで、チョコレートに特段の興味はなかったんです。

2001年の入社以来、主に生鮮食品を担当していました。12年間配属された伊勢丹立川店で力を入れたのは“お米”です。都心から離れた店舗では、ただ待っていてもお客様は来てくれません。そこで、全国の米農家を回り、生産者の顔が見える売り場づくりに取り組みました。作り手の個性をお客様に伝えたいと今も思うのは、この経験がきっかけでもあります。

密かな自慢ですが、私が担当していた頃の、伊勢丹グループ内のお米の売り上げは、伊勢丹新宿店を抜いて立川店がトップだったんです。そして、東日本大震災のときも、様々な地域の農家さんがお米や水を店舗に送り、支援してくれました。

当時知り合った農家さんとは、今でも付き合いがあり、田植えの時期には手伝いをしています。畑作りにも興味が湧き、トマトやナスの家庭菜園も始めました。ただ、本業が忙しく、自分の時間が取れないことが悩みです。隣の畑に迷惑がかからないように、雑草取りだけは欠かしていませんが……。

サロン・デュ・ショコラは、その年の催しが終わると、休む間もなく翌年の準備を始めます。例年、5月にパリに出張し、7月には各ブランドのショコラの内容をほぼ固めます。ヨーロッパはバカンスがあり、冬は本国でのクリスマス商戦もあるので、夏の前に決める必要があるのです。

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