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旬選ジャーナル<目利きが選ぶ一押しニュース>――西田宗千佳

【一押しNEWS】ヤフーとLINEが考えるGAFA最大の脅威/11月19日、日経新聞

 ヤフーとLINE、日本のネットサービスを代表する企業同士の統合が示していたのは、「日本だけでは規模が足りない」というシンプルな算数だった。ヤフー・川邊健太郎社長は会見で「2社で世界の第3極に」と主張しつつも、「2社を足してもまだ桁が足りない」と、正直に答えていた。それでも「強いものがどんどん強くなり、差が開いていく」とLINE・出澤剛社長は危機感を募らせており、特にLINE側の危機感はこの1年で強くなったように、筆者には思える。両社が統合すべき、という結論に至った背景には、「統合するだけで課題解決にはならなくとも、1社であたるよりははるかに良い」という事情があるのだ。

 GAFAが世界中からビッグ・データを集めて利用する……という新聞紙上を賑わすような話題だけでなく、シンプルに「生活をカバーする技術の価値」として、英語と日本語の差は生まれてしまっている。

 例えば音声認識。英語と日本語の間では品質に大きな差がある。会議や取材の「自動書き起こし」は、日本語の場合まだ実用的とは言い難いが、英語では可能になっている。日本企業で議事録作成やサポート資料作成の際、「聞き起こし」に人と予算を割いている一方で、英語ではそれを機械が行える。時間とコスト両面における競争力に差が出る。テクノロジー大手が日本語対応するのを待っていてもいいが、それでは、日本と他国の差が開くだけである。

 ここで重要なのは、「日本はまだしも恵まれている」という点だ。1億3000万の人口がいて、日本語話者も多い。英語には敵わなくとも、「1つの言語を話す国」として見れば、数が多い国の1つであるのは間違いない。もっと厳しい国の方が多いのだ。

 会見で両社は「両社で解決できるはずの社会的課題はもっと多い」と強調している。これはとりもなおさず、両社がもっているリソースは、日本市場のためにもっと活かせるはず、ということでもある。英語圏・中国語圏が先に走り、他の言語圏はそれらの技術が自国の言語と文化に対応するのを待つだけ……という状況になるのは避けるべきだ。

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