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メーガン妃発言で「世論二分」でも…英王室“積極的メディア戦略”の理由 |河西秀哉

イギリス王室のヘンリー王子の妻であるメーガン妃がアメリカメディアのインタビューに答え、その発言によって世論は二分されている。「日本の皇室にとって、常にモデルであった」というイギリス王室の対応から、眞子さまと小室圭さんの結婚を巡る問題において、見習うべきことはあるのだろうか。(文・河西秀哉/名古屋大学大学院人文学研究科准教授)

【選んだニュース】メーガン妃発言 世論二分(3月11日、毎日新聞/筆者=服部正法、横山三加子)

河西秀哉さん

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 ちょうど100年前の1921年3月3日、裕仁皇太子(のちの昭和天皇)は、イギリスやフランスなどのヨーロッパ諸国を訪問するため、横浜港を出港した。第一次世界大戦後、ドイツやオーストリアなどの王制は次々に倒れ、デモクラシーの風が日本にも吹いていた。そうした状況のなか、裕仁皇太子は大戦後も生き残ったイギリス王室から君主制のあり方や国民との関係性を学ぶため、ヨーロッパを訪問する。この時以来、戦争中の時期などを除いて、イギリス王室は日本の皇室にとって、常にモデルであった。

 そのイギリス王室が今、揺れている。公務を退いたヘンリー王子の妻であるメーガン妃が、アメリカメディアのインタビューに答え、妊娠中に子どもの肌の色を懸念する発言が英王室内であったと暴露、それがアメリカやイギリスで放送されて大きな問題となった。

 イギリス王室はすぐに動き、「2人にとって過去数年間がどれほど困難なものだったかを知り、家族全員が悲しんでいる」、「いくつかの記憶は異なるかもしれないが、真剣に受け止めて対応していく」との声明を発表した。

 メーガン妃の発言はどうして大きなインパクトを与えたのか。肌の色という、彼女自身ではどうすることもできない問題について、王室内の誰かが発言したという話は、そこが人種差別的な空間だとのイメージを植付けることになる。現代社会の価値観から言えば、相当にイメージダウンにつながるだろう。実際、イギリスの新聞タイムズは、「他にはないほどの大きなダメージ」と社説に掲載した。旧態依然の王室というイメージは、国民からの支持を失う危険性が充分にある。

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 一方、『毎日新聞』の記事「メーガン妃発言 世論二分」という見出しが示すように、イギリス国内では必ずしも王室イメージが毀損されたとばかりは見られていないようだ。メーガン妃やヘンリー王子がイギリスを離れた事情が、本当はそうした問題ではなく、メーガン妃の「わがまま」ではないかとも一部では受け止められている。つまり今回の発言も、記事が紹介しているように、メーガン妃は移住したアメリカで「センセーショナルにあいさつする手段として、君主制にダメージを与え」たとも推測されている。

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