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シミュレーション 令和X年 戦争への道【中東問題】ホルムズ海峡で海自イージス艦襲撃

文・潮匡人(評論家)

  始まりは令和元年だった。同年6月、ホルムズ海峡付近で2隻のタンカーが攻撃を受けた。うち1隻は日本のタンカーである。

 中東地域をカバーするアメリカ中央軍は、リムペット・マイン(limpet mine=吸着水雷)による攻撃と断定。あわせて「イラン革命防衛隊による犯行の証拠動画」も公表した。

 リムペット・マインは磁力で船体に吸着させ、時限信管や遠隔操作で爆発させる。海中では水圧を受けるため、そのぶん船体への破壊力が増す。この結果、船体を損壊させ、航行不能にできる。ゆえに海上での破壊工作活動に使われることが多い。

 ホルムズ海峡はペルシャ湾とオマーン湾に挟まれ、最狭33キロしかない。海上交通の要衝であり、世界の石油の3〜4割が通る。ここでの有事は原油価格の上昇に直結する。世界経済への影響は大きい。

 なかでも日本は、年間原油輸入量の9割前後が中東産であり、85%以上がホルムズ海峡を通過する。まさに「日本の生命線」と呼んでも過言でない。

 令和元年、その生命線が脅かされた。リムペット・マインに加え、同年後半にはドローン(無人機)による攻撃も相次いだ。安価で大量生産でき、低空を飛行するため防空レーダーに発見されにくいイラン製のドローン兵器などによる自爆攻撃の多発が地域の緊張激化に拍車をかけた。

 だが、残念ながら、日本の大手商船各社は、最短時間でホルムズ海峡を通過するなど最低限の対策しかとれなかった。

平成のツケを令和が払う……

 令和X年、原油価格の指標となる米WTI原油の先物価格が、ついに1バレル=100ドルを突破。世界と日本に衝撃と不安が広がった。かねてから世界が危惧してきたリスクが現実となった。

 アメリカ大統領は「ホルムズ海峡を通る船を各国が守り、われわれと取り組むよう求める」と語り、「海洋安全保障イニシアチブ」(The Maritime Security Initiative)と名称を変えた「有志連合」への参加を、改めて強く呼びかけた。

 他方イランは、各国に参加しないよう求めてくる。イランとの良好な関係か、それとも日米同盟か……。股裂き状態となった日本政府は湾岸戦争の教訓を踏まえ、自衛隊派遣の検討を始めた。

 検討された第1案は、自衛隊法第82条が定める「海上における警備行動」の発令である。

 だが、同条を根拠に地球の裏側のペルシャ湾へ派遣するのは「専守防衛」からの逸脱ではないか――一部マスコミはそう批判した。

 加えて、現場を担う海上自衛隊からも疑問の声が上がった。なぜなら自衛隊法が準用する警察官職務執行法第7条は但し書で、「正当防衛若しくは緊急避難に該当する場合」などを除いて「人に危害を与えてはならない」と定めているからである。

「ここまで厳しく手足を縛られたままでは、現場で安心して活動できない」――政府部内からも疑問や不満の声が上がった。

 そこで次に、「海賊対処行動」(自衛隊法第82条の2)として自衛隊を参加させる第2案が浮上した。

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